「そろそろ自分は引退して、会社を後進に譲りたい」「のれん分けしたいときは、どんな手続きが必要?」と考えている経営者の方に適しているのが、MBO(マネジメントバイアウト)です。自社の経営陣自らが、株式や事業の譲渡により経営権を取得する仕組みを表します。今、MBOの手法が注目されている背景を説明した後に、MBOの内容やメリット、デメリットを解説します。
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この記事の目次
MBO(マネジメントバイアウト)とは?
MBOとは、「Management Buyout」の略称で、日本語訳はされずに「MBO」または「マネジメントバイアウト」と称されるのが一般的です。あえて訳せば「経営陣による企業買収」となります。他の法人や資産家等に会社を買収される形で譲渡を行うのではなく、自社の経営陣に株式や事業を譲る行為を指します。
ビジネス方面でのMBOといえば、他に「Management by Objectives」もあります。これは社員らが自ら目標を設定することによる人材管理法を指します。本記事では、この意味でのMBOではなく、M&Aの手法の一つでもある「マネジメントバイアウト」のMBOについて解説します。
MBOがとくに注目される背景には、景気低迷があります。バブル崩壊以降、規模を広げすぎた事業を整理するための手段の一つとして使われてきました。またもう一つには、日本の中小企業全体を覆う後継者不足があります。少子化や、誰もが自分の好きなライフスタイルを選べる時代へ突入したことにより、親族に会社を継がせるということが難しくなっている中小企業は年々増加しています。そこで、会社役員等、経営陣に事業を承継するMBOの手法が注目を浴びてきたのです。
MBOにはいくつかのメリットがあり、それも注目すべき理由となっています。メリットと、注意すべきデメリットについては、次項から詳しく解説していきます。
MBOのメリット
MBOのメリットは、次の5つです。
①それまでの企業風土、従業員の処遇などを保持できる
他の法人等に会社を譲渡すると、売買に条件を付けていたとしても、長きにわたって企業風土や従業員の処遇を完全に保全することはできません。一方でMBOの場合は、それまで長く会社に貢献してきた経営陣が自社を引き継ぐため、従業員が働く現場においては、ほとんど変化がないといっていいでしょう。企業風土が守られ、従業員や取引先は安心します。
②情報流出のリスクがない
企業買収となると他の法人等によって自社の業績などを吟味されることになります。契約に至るにしろ、至らないにしろ、また秘密保持契約を結んでいるにしろ、情報が流出するリスクは否めません。MBOであれば内部での株式譲渡や事業譲渡になるため、情報が外部に流れることはないです。
③風評リスクを回避できる
他社への買収は、たとえ前向きなM&Aであったとしても、周りから「身売りした」「乗っ取りを受けた」と受け取られかねません。買収後も、ブランドに傷がつく恐れがあります。MBOであれば、社長の交代以上の印象を世間に与えることはないです。
④ オーナーに現金が残る
株式を手放すことになるオーナーには、現金が残ります。老後の資金として活用が可能です。
⑤会社のさらなる躍進が期待できる
MBOは、それまでの会社を経営陣に譲渡し、今までのオーナー社長は新たな会社でチャレンジを続けるといったときにも使われます。より一層責任感を増した経営陣と、新規事業にチャレンジする元オーナーとがタッグを組めば、融合効果やさらなる躍進が期待できます。
MBOのデメリット
MBOのデメリットは、以下の3つです。
①株主の反対にあう可能性がある
既存株主にとって利益が薄くなるMBOの場合、交渉が難しくなる恐れがあります。既存株主が買い取りに応じなければ、MBOは滞ります。
②資金調達が難しい場合がある
経営陣が、会社の経営権を引き継げるだけの資金を持っているとは限りません。その際は金融機関やファンドから融資などを受けることになります。シンプルにいえば多額の債務となってしまうため、経営陣にとっても覚悟が必要です。
③経営陣に株式が集中するため、経営の監視機能が弱まる
経営陣に株式を集中させると、意思決定が速やかに行われるようになります。しかし、経営の透明性に対する監視機能は弱くなります。
MBOの実施方法
MBOを実施する方法は、主に次の3つがあります。
株式譲渡
株式を経営陣が取得することで大株主を書き換えます。既存の発行済み株式を譲渡するか、第三者割当増資による新株引受を行いますが、経営の支配権を掌握するためには50%を超える株式の保有が必要です。また、完全に経営支配権を取得するには100%に近い株式を保有しなければならず、新株を発行した場合でも、発行済み株式の譲渡は欠かせません。
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事業譲渡
事業譲渡は、会社の一部の事業を譲渡する方法で、株式譲渡のように会社を包括的に継承するものではありません。会社が行っている事業の一部を経営陣に任せたいなどといった場合に使えます。
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承継する企業をSPCが子会社化する
経営陣に手持ちの資産がない場合、SPC(特別目的会社)を設立し、資金調達の受け皿とします。会社を設立すれば、経営陣らは法人の信用をもとに融資を受けられるため、それを元手に承継会社の株式を購入できます。つまり承継企業がSPCに株式譲渡をする形になり、最後にはSPCと承継会社が合併することでMBOが完了。合併してできた新会社は、資金調達の際にできた借入金を返済しながら、事業を回していくことができます。
今までの事業を滞りなく承継できるMBOを活用しよう
会社の内部承継が可能なMBOなら、今までの事業内容のみならず、企業風土や従業員の処遇、取引先との契約などもそのまま引き継ぐことができます。ネックとなるのが経営陣の資金繰りですが、これもSPCの仕組みを活用することで問題が解消されるでしょう。「親族に会社を継いでくれる人がいない」「一事業部だけを切り離したい」と悩み、考える経営者の方は、メリットの大きいMBOを検討してみてはいかがでしょうか。
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