M&Aとは?TOBやMBOの意味や合併買収に関する手法やメリデメを解説

中小企業の経営者の中には、「そろそろ事業承継のことを真剣に考えなければ」と感じている方も多いことでしょう。家族経営でありながら子どもが後継ぎになってくれない、しかし従業員のことを考えると会社を閉めてしまうのも心苦しい……そんなときに検討したいのがM&Aです。M&Aについての基本的な知識やその歴史、背景、さらにM&Aのメリット、デメリットについて解説します。

M&Aとは

M&Aとは、『Mergers and Acquisitions』の略です。訳せば「合併と買収」となりますので、2つ以上の会社が1つになる合併と他社を買う買収を意味する用語です。現在は、企業同士の資本や業務の提携まで含めて「M&A」と表現する場合もあります。

M&Aの市場動向や歴史

日本の工業化にM&Aが大きな役割を果たしていたと聞くと驚く人も多いかもしれません。日本国内でM&Aが行われるようになったのは最近だというイメージがあるからです。しかし20世紀初頭に起きた造船・金属などの工業化は、M&Aで行われました。

ただ終戦後には財閥解体などが起こり、改めてM&Aが話題になったのは1980年代後半から1990年代初期のバブル期でした。有り余った金は、海外の不動産だけではなく、企業にも向かったからです。ただ当時のM&Aは失敗したケースが多く、早々に手放す結果となりました。

その後、1990年代後半から国内企業のM&Aが盛んになります。ライブドア、 村上ファンド、楽天などによる敵対的な買収を思い出す人も多いでしょう。その後、リーマンショックや東日本大震災の影響で落ち込んだものの、2017(年には3000件を突破、2019年には4000件を超えたM&A成立件数が報告されています。またM&A取引総額を見ると、2018年に過去最高の約29兆8800億円を記録しています。

2021年はコロナ禍によりやや勢いに陰りが見られるものの、収束後には、その勢いを取り戻すだろうと予測されています。

M&Aの手法と形態

M&Aを理解するときにネックとなるのが、その手法と形態です。そこで代表的なものを解説していきましょう。

業務提携

企業が共同で事業を行うのが業務提携です。資金や技術、人材などを提供しあって事業を進めることができるので、事業の競争力を強化することが可能になります。

資本業務提携

広義のM&Aとされている資本業務提携ですが、その時点では相手企業の支配するものではありません。業務提携とは、先にも触れたとおり業務を共同で行うこと。一方、資本提携はどちらかの企業が株式の一部を取得するか、互いに株式を持ち合うことです。つまり資本業務提携は資本の移動がある業務提携となります。

資本業務提携はただの業務提携よりも深い関係を築けますが、将来的な買収や合併につながる可能性も秘めたものです。

合併

合併は2つ以上の法人を統合することです。消滅する会社の資産、負債、権利義務を継続する会社が継承する吸収合併と、合併する企業で新たに会社を設立する新設合併があります。

買収(「株式譲渡」、「第三者割当増資」、「株式交換」、「株式移転」、「事業譲渡」)

買収は資産や経営権を取得しますが、会社自体は存続します。それが合併との違いです。では、買収にはどのような種類があるのでしょうか? 代表的なものを解説していきましょう。

・株式譲渡

「株式譲渡」は個人や法人が持つ株式を売買する手法です。M&Aでは最も一般的な方法といえます。

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・株式交換

「株式交換」は、ある会社の発行済株式のすべてを取得し、完全子会社化にする手法です。一般的には、親会社となる会社の株式を子会社の株主に交付します。この手法だと買収のための現金を用意しなくてもよいメリットがあります。

・株式移転

「株式移転」は、子会社の新設する会社に子会社のすべての株式を取得させる方法です。ホールディングスなどの持株会社を設立したケースを思い出してもらえば、わかりやすいでしょう。新しい会社の下に完全子会社として既存の企業を置くことができ、親会社の新株を子会社の株主に交付すれば、買収資金もかかりません。

先に説明した「株式譲渡」は、企業全体が対象となります。一方で「事業譲渡」は事業単位で譲渡する手法です。契約によって資産や負債についても取り決めができます。

・第三者割当増資

「第三者割当増資」は、買収の手法ではありません。企業の資金調達方法の一つで、新株を特定の第三者に引き受けさせる増資方法です。ただ、「第三者割当増資」は敵対的買収で耳にすることが多い単語です。会社の友好的なパートナーに第三者割当増資をすれば、買収会社の持株比率を低下させることができるからです。

・合弁会社設立

互いの共通の利益のために共同で設立するのが「合弁会社」です。2つの企業が50%ずつ株を持つのが基本的となります。ただしビジネスを進めるうえでも出資比率は非常に重要なため、慎重な調整が行われます。

・資本参加

企業が関係強化のために株式を取得・保有するのが「資本参加」です。「資本提携」は互いに株式を持ち合う形となりますが、「資本参加」は一方的に協力するものです。

・TOB

資本参加と同様、持株比率を大きく左右する手法としては、「TOB」(Take-over Bid )も重要でしょう。「株式公開買付」などと訳されますが、現状の株主から買付ける手法で、買付期間や価格、買付予定株数などを公表して行うものです。

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・MBO

「MBO」も持株比率を変えるものです。マネジメントバイアウト(Management Buyout)の略で、経営陣が既存の株主から自社の株式を取得するものです。つまりオーナー経営者になる方法です。近年、株式公開をするメリットが以前より少なくなってきたとも言われる中で、注目されている手法です。

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M&Aのメリット

ここまでM&Aの手法など、全体像を理解するための基礎的な知識を解説してきました。では、実際のM&Aのメリットやデメリットはどんなものでしょうか?

事業規模の拡大

M&Aで手に入れることができるのは、不動産や設備といった目に見えるものだけではありません。顧客や流通網、独自のノウハウなど見えない「資産」も手にすることができます。売手にとっても資本や新たなノウハウが持ち込まれることによって、企業成長の機会ともなりえます。

技術の向上

企業が持っている技術力を取り込むことができるのは大きなメリットです。互いに持っている技術を掛け合わせることで、新規技術の開発も可能となります。ビジネスのスピードが上がっているだけに、技術開発にかける時間が短縮されるのは大きいです。

事業の多角化

自社と違う分野で強みを持っている企業を買収することで、比較的、安全に新規の分野への参入が可能となります。先の見えにくいビジネス環境だけに、事業の多角化を視野にいれたM&Aは、買手企業にとって大きなメリットです。

弱点の強化

通常、企業には弱点があります。販売網や商品開発力といった見えやすいものだけではなく、材料の調達網といった部分も企業の利益に大きく関係してきます。そのような弱点をカバーする方法としてM&Aを使うことができるのです。

後継者問題の解決

中小企業のM&Aでは、後継者不在の問題解決として活用されることが少なくありません。ビジネス推進のすべてを担っていた社長の引退が廃業につながるといった状況を回避するためにM&Aが活用されています。

M&Aのデメリット

弱いシナジー効果

通常、M&Aは複数の企業が合わさることによるシナジー効果(相乗効果)を狙ったものです。しかし計画と違って、シナジー効果が発揮されないケースも少なくありません。1+1が3にも4にも化ける予定だったのが、2どころか1になってしまったというケースもあります。

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従業員の不満

M&Aが実施された後、一時的に社内が混乱することはよくあります。企業文化が違う社員が一緒に仕事をするためです。その混乱がうまく落ち着けばいいのですが、買収された企業の社員の不満が大きくなってしまうケースもあります。

優秀な人材の流出

どれだけ企業が高い技術を持っていても、その根幹には人がいます。M&Aの混乱が優秀な人材の流出を生むことは少なくありません。特に買収された企業の優秀な人材がしっかり働ける環境をつくることは重要です。

取引先の反発

経営は自社だけの努力でどうにかなるものではありません。取引先があってこそ、売上が確保できるのです。M&Aが取引先の反発を招き、取引停止になるといったケースが、M&Aの失敗につながってしまうケースもあります。

予期しない債務

M&Aを進めるにあたって、相手企業の経営状況を調べることは重要です。じつは大企業同士のM&Aでも、貸借対照表上に記載されていない簿外債務が問題になるケースがあります。

M&Aの成功のために重要なこと

不安的な要素をはらむM&Aだけに、これだけは忘れてはいけないといった重要事項もあります。

明確な戦略

M&Aには明確な戦略が必要です。何を目的として、どうやってシナジー効果を生むのか、ハッキリした戦略がないままにM&Aが進むと期待したシナジー効果が生まれないだけではなく、もともと事業にも悪影響を及ぼしてしまうことがあります。

しっかりとした買収監査(デューデリジェンス)

M&Aの手続きの中でも最も重要なものの一つが買収監査(デューデリジェンス)です。売手企業から提供される資料を精査し、現地の調査などを含めてチェックする作業です。先にも触れた簿外債務の存在などが、M&Aが成立した後に発覚すると非常に大きな問題となります。

良好な人間関係

M&A成立後の統合プロセスをどれだけしっかり計画しても、従業員や取引先との人間関係がうまくいかないと、期待されたシナジー効果を生むことはできません。特に社風の異なる企業同士のM&Aでは、社内の人間関係をしっかりフォローできる体制がないと、優秀な人材ほど退社してしまうという結果を招きます。

M&Aは企業同士の「結婚」に例えられる

以上に示したように、M&Aはドラマなどでよく見かける「圧倒的な力を持つ買主企業が突然現場を仕切りだす」ような、乱暴なものではありません。買主にも、売り主にも、それぞれメリットとデメリットがあります。双方が条件を出し合い、納得し合わなければ合意に至らないため、M&Aは企業同士の「結婚」に例えられるほどです。事業承継に悩んだら、早めにM&Aを仲介してくれるパートナー、いわば「仲人」探しを行いましょう。