大企業から中規模な組織、そして個人事業主まで、全ての組織には経営戦略が必要です。この記事では、経営戦略を策定するときに考えたいプロセスについて解説します。プロセス決定の際に知っておきたい考えや、経営戦略をうまく使った事例などについても解説するので、参考にしてみてください。
経営戦略の策定プロセスとは？
経営戦略の策定プロセスとは、組織が目標を達成するための戦略を計画し、実施する一連のステップのことをいいます。以下のような、経営分析に関わる全ての過程が含まれます。
・市場や内部環境の分析
・目標の設定
・戦略の策定
・実施
・効果の評価と調整
戦略策定を進めるなかで、組織は長期的な成功を目指し、環境の変化に対応するための適切な戦略を考案できるといえます。競争力を高め、持続可能な成長を達成するためには不可欠なプロセスといえるでしょう。
経営戦略の策定プロセスを具体的に解説
経営戦略の策定プロセスの5ステップについて、具体的に解説します。
1. 状況分析
現在の市場環境、業界の動向、競合他社を分析します。組織の持つ強みや弱み、資源を評価し見積もることが重要です。
2. 目標設定
企業の長期的なビジョンや短期的な目標を設定します。短期的な目標を設定する際にも、長期的なビジョンに合致するよう検討し、戦略の方向性を明確にすることが重要です。
3. 戦略策定
状況分析の結果に基づき、どの戦略を優先していくかを定めます。戦略には、競争戦略（コストリーダーシップ、差別化、集中など）だけではなく、成長戦略（市場浸透、市場開発、製品開発、多角化など）も含まれます。
4. 戦略実施
策定した戦略を実行するためにプランニングし、実際に行動に移します。プランニングの際は、組織の構造や文化、システムを把握した上で、必要なリソース（人材、財務、技術）を割り当てることが重要です。
5. 評価や戦略の調整
戦略を実施したあとは、効果をチェックし評価します。このチェックは定期的に実施し、毎回、結果を比較していくことで、戦略が有効かどうかをより明確に判断できます。戦略が期待された成果を達成していない場合や、市場環境の変化などにより、必要に応じて戦略の修正や調整も検討する必要があります。
経営戦略の視点とは｜経営戦略の策定プロセス
経営戦略を立てる際は、戦略の対象や範囲を認識し、分割することが重要です。企業全体としての目標だけではなく、各事業や機能の役割も明確にすることで、効果的に資源を配分し、競争力を強化できます。
戦略の各レベルが経営理念やビジョンと整合することで、組織全体の一貫性と方向性を確保できるでしょう。
1. 全社的視点
企業全体の方向性と長期的な目標を定めます。ここでは、全社レベルでの資源配分、事業領域の選定、企業の競争力の源泉を特定することが含まれます。企業全体の成長と持続可能性を確保できる戦略を決めましょう。
2. 事業の視点
事業は、特定の製品やサービス、それにまつわるプロジェクトのことをいいます。「何をするか」が重要になるといえるでしょう。個々の事業単位に焦点を当て、特定の市場や製品における競争優位を確立させます。市場のニーズや競合との関係を分析し、事業単位ごとの成果を最大化するための戦略を策定します。
3. 機能ごとの視点
機能とは、営業、マーケティング、財務、人事など、企業内の部門や役割のことです。「どのように事業を実現させるか」に焦点を当てています。各部門の効率性を高め、事業戦略の成功を支えるための、具体的な行動計画や手法を策定しましょう。
事業ドメインも考慮して｜経営戦略の策定プロセス
経営戦略を策定する際は「事業ドメイン」の考え方も考慮する必要があります。事業ドメインの決め方などについて、詳しく解説します。
事業ドメインとは？
事業ドメインとは、経営戦略において企業が焦点を当てるべき市場領域や、活動領域のことをいいます。例えば、企業がどの市場や製品カテゴリーで競争するか、どの顧客層をターゲットにするかなどが挙げられるでしょう。
事業ドメインを明確にすることで、企業の強みを活かし、有利な領域で事業を運用できます。
事業ドメインの決め方1. 誰に？
事業が対象とする顧客層を明確に定義します。顧客のニーズ、好み、行動パターンを理解した上で、より価値を提供できる顧客セグメントを特定します。
事業ドメインの決め方2. 何を？
顧客に提供する製品やサービスの内容を決定します。企業のコアコンピタンスや市場ニーズに基づき、独自の価値提案や製品の特徴を明確にします。
事業ドメインの決め方3. どのように？
製品やサービスを市場に届ける方法を策定します。ここには、販売チャネル、価格戦略、マーケティング、配送方法など、顧客への価値提供プロセス全体が含まれます。
事業戦略の策定プロセスで利用できるフレームワーク
事業戦略を決める際に、利用できる考え方の枠組みや骨子であるフレームワークを7つ紹介します。
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルの各要素を視覚的に整理し、理解を深めるためのフレームワークです。価値提案、顧客セグメント、チャネル、顧客関係、収益の流れなどの要素をブロック状に分けることで、企業のビジネスモデルが把握しやすくなります。
SWOT分析
SWOT分析は、企業が自社の強み、弱み（内部環境）、機会、脅威（外部環境）を整理し、現状を客観的に把握するためのフレームワークです。内部の資源と能力を最大限に活かし、リスク対策も可能にします。
3C分析
3C分析は、顧客（Customer）、自社（Company）、競合（Competitor）の3要素を中心に、市場環境を評価するフレームワークです。顧客のニーズ、自社の強みと弱み、競合の戦略と位置づけを理解できます。
PESTEL分析
PESTEL分析は、政治（Political）、経済（Economic）、社会（Social）、技術（Technological）、環境（Environmental）、法律（Legal）の6つの外部要因を分析します。外部環境の変化によって生じる機会や脅威を予測し、それに対応する戦略を策定するのに役立ちます。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は、業界の競争環境を理解するためのフレームワークです。業界内の競争、新規参入者の脅威、代替品の影響、買い手および売り手の交渉力を分析します。これにより、業界の収益性と自社の競争ポジションを把握し、競争戦略を練ることが可能になります。
VRIO分析
VRIO分析は、企業の競争優位性を評価するためのフレームワークです。経済価値（Value）、希少性（Rarity）、模倣困難性（Inimitability）、組織（Organization）の4つの要素を考慮します。企業が保有する資源や能力がこれらの基準を満たす場合、競争優位性があると考えられます。
コアコンピタンス分析
コアコンピタンス分析は、企業が持つ独自の能力や専門知識を特定し、長期的な競争優位を構築するためのアプローチです。組織の核となる製品や能力を特定し、競争相手との差別化を図ります。新しい市場への進出や製品イノベーションをする際に利用されます。
経営戦略を策定しなかった場合
経営戦略を決めずに組織運営を進めた場合、どのような問題が起きるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
1. 市場の変化に対応できない
戦略がない場合、組織は市場の変化や競合の動きに、迅速かつ適切に対応することが困難になります。新しい機会を逃してしまうほか、競争力を失うリスクも高まるでしょう。市場の動向を理解し、それに適応するためには明確な戦略が必要です。
2. 資源の無駄遣い
明確な戦略がなければ、企業は資源を効率的に活用できません。無計画な投資や不適切な資源配分は、財務的な損失を招く可能性もあるでしょう。戦略に基づく資源配分は、企業の効率性と効果性を高める上で重要です。
組織の方向性がなくなる
戦略がない組織では、組織内の混乱や意思決定の鈍化を引き起こすことがあります。従業員は目標を共有できず、モチベーションの低下につながってしまうこともあるでしょう。組織の全員が一致団結して目標に向かうためには、明確な経営戦略が必要です。
経営戦略の策定プロセスを効果的に活用した具体例
経営戦略を効果的に作り上げ、起業の運営を成功させた2社の例について、詳しく解説します。
大手カフェチェーンの例
ある大手カフェチェーンは、競争の激しい市場で、独自の地位を築き上げることに成功しました。店内の高品質な空間と顧客中心のサービスにより、高価格にもかかわらず多数のファンを獲得。ブランド価値と独自の顧客経験を重視する経営戦略の成功例といえます。
大手エレクトロニクス企業の例
多角化戦略で知られる、ある大手エレクトロニクス企業は、もともと電子製品で知られてきました。業績が上がるのにつれ、音楽、ゲーム、金融など多様な分野に事業を拡大。電子部門の不振時でも、金融サービスが事業の安定をもたらしました。戦略的多角化によるリスク分散と収益の安定化を示す好例です。
戦略策定には客観的な視点を
戦略策定には、現実的な目標設定や全体的な視野の保持、環境の変化への柔軟性、内部資源の適切な評価などが欠かせません。客観的な視点を維持するためにも、コンサルティングサービスなど、第三者の視点を取り入れることを検討してください。より実効性のある戦略を策定できるようになるでしょう。
まとめ
この記事では、経営戦略の策定プロセスや、その際に活用できるフレームワークなどを見てきました。戦略策定には客観性が求められ、成功には現実的な目標設定や適切な資源の評価が不可欠です。
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