
不動産会社を開業する場合、専任の宅地建物取引士を置かなければならず、宅地建物取引業免許の申請手続きなども必要で、難しいと考えている方は多いかもしれません。
しかし、不動産業は従業員を雇わずに一人からでも開業でき、店舗は必ずしも必要ないとしたら、ハードルは下がるのではないでしょうか。
この記事では、不動産業で独立・開業までの手順や、メリット・デメリット、注意すべきポイントを解説します。
開業についてサポートが必要な方向けに、フランチャイズに加盟して開業する方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
不動産業での独立に際して決めること
不動産会社の設立を決めたら、まず何から始めたらよいのでしょうか。開業に際してやるべきことは多岐にわたりますが、順序立てて準備を進めましょう。
不動産業界で開業する際は、これから紹介する事項を決めておきましょう。
参考:【ハウスドゥ】不動産会社を設立するまでの流れや手順と設立後に必要なこと
店舗型・事務所型のどちらにするか
不動産会社を開業する場合、駅前の1階店舗を希望する方が多いかもしれません。確かに駅の近くであれば、人通りも多く、飛び込みの顧客を獲得できるかもしれません。
しかし賃料が高額なため、ランニングコストには注意が必要です。
一方で、開業資金を抑えて開業したいのであれば、マンションの1室やレンタルオフィス、自宅の一部を事務所として利用する方法もあります。
Web上に広告を掲載するなどして反響を得られれば、必ずしも店舗は必要ありません。
また開業当初は費用を抑えて開業し、資金が用意できたら店舗を構える方法もあります。どちらが向いているのか検討し、かかる費用も考えてどちらにするか決めましょう。
宅地建物取引士の資格取得
不動産会社を営む場合、従業員5名に対し、1人以上の専任の宅地建物取引士を置く必要があります。不動産会社開業にあたり、自ら勉強して宅地建物取引士の資格を取得するのか、資格保持者を雇うのか決めましょう。
資格を持っている人を雇うのは、そう難しいことではありません。しかし何らかの理由で退職されてしまうと、速やかに補充しなければなりません。
宅地建物取引士不在のままでは営業は続けられませんので、基本的にはご自身が資格を取得することをおすすめします。
ちなみに宅地建物取引士の資格試験は、1年に1回(毎年10月の第3日曜日)しか実施されていません。タイミングによっては先の日程になりますので、早めに検討するようにしましょう。
定款に何を含めるか
個人事業主でも不動産会社を開業できますが、社会的信用を得るために、法人化するケースがほとんどです。法人化する場合は、定款に何を含めるのか決めておきましょう。
法人化して開業する場合は、会社登記をすることになり、定款の作成が必要です。
定款には、事業内容や会社名、資本金額、発行株式数、1株の値段などを定めて作成します。定款は「会社の憲法」とも呼ばれることがあるほど、大切な手続きです。
司法書士に設立手続きを依頼する方法もありますが、マイナンバーカードとICカードリーダライタがあれば、オンライン申請も可能です。法務局のホームページから定款のひな型をダウンロードし、必要事項を埋めて申請しましょう。
参考:【法務局】株式会社の設立登記をしたい方(オンライン申請)
会社名
会社名を何にするかを迷い始めると、いつまで経っても決められなくなるケースもあります。
定款を作成する際や、宅地建物取引業免許を申請する際にも必要なため、会社名についてもなるべく早めに決めておきましょう。
会社名は基本的に自由で決めることができますが、使用できない漢字があり、官公庁の名称は使用できません。
また同じ市区町村で同じ社名の会社登記はできませんので、インターネットなどで検索し、類似する社名がないか確認しておきましょう。
不動産業で独立・開業するまでの手順
不動産業で独立する場合、開業までに必要な申請や手続きがあります。最短でも2カ月程度かかるともいわれていますが、会社員として勤務しながら進めると、もう少し時間がかかるかもしれません。
ここでは、おおまかな手順を紹介しますが、場合によっては順序が異なることもあるでしょう。開業を検討している方は、一つの流れとして参考にしてください。
参考:【公益社団法人全日本不動産協会】不動産業で独立する方法を8ステップで解説|年収の目安や失敗の原因も紹介
事業計画
不動産業といっても、不動産仲介業(賃貸・売買)や賃貸管理業、買取再販業、不動産開発など種類があります。
例えば仲介業と賃貸管理業の両方をすることも可能ですし、組織が大きな会社などでは、複数の業態を展開しているケースもあります。
後から拡大することも可能なため、特に少人数で開業する場合は、一つに絞っておくとよいでしょう。
出店エリアや店舗の有無、人を雇うのかなど、おおまかでもかまいませんので、ある程度イメージを固めておきましょう。
資金調達
開業資金がいくらかかるのか試算しておき、自己資金から捻出するのが難しいときは、金融機関の融資や国の補助金の利用を検討しておきましょう。
不動産会社を開業する場合、開業資金として400万~1,000万円かかるといわれています。店舗代(敷金や保証金、仲介手数料など)や店舗改装費、設備費のほか、営業保証金や法人設立費などもかかります。
運転資金なども考慮し、余裕を持って計画するようにしてください。
事務所の設置
不動産会社を営む場合は、宅地建物取引業免許が必要で、事務所の形態も審査対象になります。店舗を借りる方法以外に、自宅の一角を事務所として利用することも可能ですが、条件を満たしているのか、確認するようにしてください。
詳しいルールについては、後半で解説します。
専任の宅地建物取引士の設置
先述のとおり、宅建業を営むには、従業員5人に対し1人の専任の宅地建物取引士が必要です。したがって、従業員が6人になると、宅地建物取引士は2人必要になります。宅地建物取引業法を逸脱しないよう、注意しましょう。
宅地建物取引業免許の申請
不動産会社を営む場合は、宅地建物取引業免許が必要です。複数の都道府県をまたいで店舗を設置する場合は「国土交通大臣免許」、一つの都道府県のみの場合は「都道府県知事免許」になります。
なお、宅地建物取引業免許の申請をするときまでに事務所が必要なため、申請時までに事務所をどこに構えるのか決めておきましょう。
申請方法やエリアによって、差はございますが、
一般的には以下の表のとおりです。
| 免許の種類 | 申請料 | |
| 複数の都道府県に事務所を設置する場合 | 国土交通大臣 | 90,000円 |
| 一つの都道府県のみに事務所を設置する場合 | 都道府県知事 | 33,000円 |
参照:
【東京都住宅政策本部】宅地建物取引業免許申請の手引(東京都知事免許・国土交通大臣免許)
営業保証金の供託(もしくは保証協会への加入)
不動産業を営む場合は、宅地建物取引業法(以下宅建業法)によって、営業保証金の供託が義務づけられています。不動産業を営む者が消費者に損害を与えた場合に備えて、供託するものです。
本店(主たる事務所)は1,000万円、支店(従たる事務所)は1店舗につき500万円を供託しなければなりませんが、保証協会に加入すれば弁済業務保証金制度を利用でき、本店は60万円、支店ごとに30万円で済みます。
保証協会は、「全国宅地建物取引業協会(全宅)」と「全日本不動産協会(全日)」があり、どちらかを選んで加入することになります。
セミナーの開催など、サポート体制も充実していますので、加入を検討してみてください。
法人の設立(開業届の提出)
個人事業主でも問題なく不動産会社を開業できますが、節税や社会的信用を考えると、法人化がおすすめです。
法人で独立開業する場合は、本店が所在する地域を管轄する税務署へ届け出をし、法務局で会社登記をします。
法人化にかかる費用の内訳は、以下のとおりです。なお、ここでは株式会社を想定しています。
・登録免許税:15万円
・定款認証手数料:3万~5万円
・定款の印紙代:4万円(電子定款は印紙不要)
・定款の謄本代:2,000円
以上、合計で182,000~242,000円です。
個人事業主の場合は、住所を管轄する税務署へ「開業届」を提出することになります。ちなみに届け出に際して、費用はかかりません。
開業(開店)
いよいよ開業日を迎えます。事前にお客様を迎えられるよう準備をし、集客のためのチラシや広告なども準備しておきましょう。
不動産業で独立するメリット

数ある業種の中から不動産業を選んだ先輩方は、どこにメリットを感じて選択したのでしょうか。ここでは、不動産業ならではのメリットを紹介します。
在庫を抱える必要がない
事業を営む場合、売れ残りや廃棄が多くなると、利益率が下がってしまうなどのリスクが生じます。
しかし不動産業、特に仲介業や賃貸管理業を中心とする場合は、製造業や小売業などと異なり、在庫を抱える必要がないのがメリットです。
在庫を置いておく必要がないため、比較的コンパクトな店舗や事務所で開業でき、店舗や事務所にかかる費用を抑えることもできるでしょう。
顧客1件あたりの単価が高い
不動産業は、小売業などに比べて、顧客1件あたりの単価が高いのが魅力です。
例えば5,000万円の戸建てを仲介したら、
「5,000万円×3%+6万円+消費税=171.6万円」
の仲介手数料(上限額)を手にすることができます。
賃貸物件の仲介をした場合は、原則として貸主・借主それぞれから家賃の0.5カ月分(依頼者から事前の承諾がある場合は、どちらか一方から最大1カ月分)を仲介手数料として受け取れます。
売買仲介と賃貸仲介が軌道に乗ったら、賃貸管理業も展開するなどし、事業を拡大していくことも可能です。
開業資金を抑える方法もある
不動産業は高額な物件を扱うことも多く、開業資金も高額になるのではと、心配する方も多いかもしれません。
しかし不動産業は基本的に在庫を抱える必要がなく、店舗型ではなく事務所型にするなど、家賃を節約する方法もあります。設備もリースにするなどすれば、最小限の開業資金からでもスタートできます。
考え方次第で開業資金をコストダウンできるのも、不動産業ならではのメリットといえるでしょう。
不動産業で独立するデメリット
メリットが多い不動産業にも、デメリットはあります。ここでは、デメリットともいうべき、注意点について解説します。
収入が不安定になる可能性がある
不動産業は、顧客単価が高いものの、売上が安定しない傾向があります。小売業や製造業であれば、リピート顧客からの注文を予測できますが、不動産取引は一生の間に何度もするものではないため、リピート顧客の利用は期待できません。
効果的な広告や紹介顧客の獲得など、地道な営業活動を心がけ、収益の安定につなげましょう。
ちなみに賃貸管理業には、管理物件の更新(2年に1度)業務があり、入居者から更新料、賃貸オーナーからは管理料(毎月)を得ることができます。賃貸業を早期に軌道に乗せて、賃貸管理業にも挑戦しましょう。
身につけなければならない知識が多い
不動産取引を仲介するにあたって、宅地建物取引業法や民法、建築基準法、都市計画法、借地借家法など、不動産に関連する法律を熟知しておかなければなりません。
また顧客から税金について相談された場合に備えて、税法も把握しておく必要があります。
不動産会社を営む場合は、さまざまな知識を身につけておかなければならないと心得ましょう。
特に税法は改正になることが多く、一度覚えたら終わりではありません。不動産取引に関連する情報には、常にアンテナを張っておくようにしましょう。
トラブルに発展した場合に責任が重い
不動産は数千万円以上と高額な取引な上、顧客にとって一生に一度の大きな買い物です。
宅地建物取引士は、仲介にあたって重要事項説明をする義務があり、事実と異なる説明をしてしまうと、損害賠償請求をされるだけでなく、業務停止などの行政処分の対象にもなります。
役所調査や現地調査をしっかりと行い、トラブルに発展することがないように努めましょう。
不動産業での開業で注意すべきポイント

不動産会社を開業する場合、どのようなことに注意しなければならないのでしょうか。ここでは、知っておくべき注意点について解説します。
独立した事務室を備えなければならない(自宅も可能だがルールがある)
不動産会社の事務所には、厳密なルールがあり、逸脱してしまうと宅地建物取引業の免許の申請ができません。店舗を借りる際は注意し、「賃貸借契約を結んでから気がついた」ということがないよう、くれぐれも気をつけましょう。
重要事項説明書や売買契約書を厳重に管理する必要があり、また顧客が落ち着いて重要事項や契約内容について説明を受けられるよう、ほかのスペースとは独立している空間である必要があります。
例えば自宅やレンタルオフィスを利用する場合は、入口から直行できる動線である必要があり、事務所には鍵をかけられるようにしなければなりません。
玄関や入口に、会社名や宅地建物取引業者である旨の標識を掲示する必要もあるため、事務所を検討する際は、要件をよく確認しておくようにしてください。
専任の宅地建物取引士を設置する必要がある
不動産会社を営む場合は、従業員5名に対し、1人以上の専任の宅地建物取引士を置く必要があります。何らかの理由で退職となる場合は、速やかに補充しなければなりません。
契約時の重要事項説明は、必ず宅地建物取引士が行わなければなりません。業務が滞るだけでなく、業務停止となれば信用問題にもなります。
基本的には自らが宅地建物取引士の資格を取得しておくほか、従業員が多い場合などは、ギリギリの人数ではなく余裕を持って有資格者を雇うようにしましょう。
集客のための活動が大切(看板を掲げてもお客様が来るとは限らない)
不動産業に限ったことではありませんが、新規に開業する場合、顧客を獲得するまでに時間がかかることは少なくありません。駅の近くの1階に店舗を構えたとしても、すぐに売上を上げられるわけではないでしょう。
特に不動産業(仲介業)は成功報酬のため、成約に至らなければ、収入はゼロです。
集客のための行動に力を入れるようにし、ホームページの開設や不動産ポータルサイトへの物件掲載、チラシの配布など、あらゆる広告活動を駆使して、顧客獲得に尽力するようにしてください。
不動産業をフランチャイズに加盟して開業する方法
不動産業での開業はハードルが高いと感じたら、フランチャイズへの加盟も検討してみてください。
認知度が高い加盟店であれば、その商標やロゴを掲げるだけで集客しやすく、ノウハウやマニュアルを利用できれば、売上を上げやすくなるでしょう。
ここでは、フランチャイズに加盟して、不動産会社を開業する方法を紹介します。
情報収集
気になるフランチャイズに対して資料請求し、加盟するメリットや加盟の要件を確認しましょう。加盟金やロイヤリティなどの金額や計算方法(売上歩合、粗利分配、定額など)は、フランチャイズによって異なります。
たとえば「定額制ロイヤリティ」を採用している本部であれば、売上が上がるほど手元に残る利益が大きくなり、経営のモチベーションアップに直結します。複数のフランチャイズを比較し、実際に足を運ぶなどして情報収集しましょう。
ハウスドゥでは、資料をご請求された方へ「不動産マニュアル」と特典資料を無料でプレゼントしています。随時セミナーも開催していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
フランチャイズ本部の選定
検討したフランチャイズの中から、加盟したいフランチャイズを選定しましょう。なお加盟には審査があり、必ずしも加盟できるわけではありません。
まず加盟したい旨を伝えて、その後の流れを確認しておきます。
加盟説明会やセミナーへの参加
フランチャイズによっては、加盟説明会や開業セミナーを用意しています。オンラインで受講できるケースもあるため、参加したい旨を伝えて、積極的に参加しましょう。
フランチャイズ契約の締結
いよいよ加盟を決めたら、フランチャイズ本部とフランチャイズ契約を結びます。加盟金の支払いなどが発生するため、いくらなのか、またいつまでに納めるのかなど、事前に確認しておくとよいでしょう。
開業エリアの選定と店舗の準備
フランチャイズによっては、加盟店同士が狭い商圏で顧客を取り合うことがないように、「テリトリー制」を採用していることがあります。
希望するエリアで開業できるとは限りませんが、店舗の出店場所に関して市場調査の上、提案してくれるフランチャイズもあります。店舗を構える立地については、本部とよく相談しておきましょう。
出店場所が決まったら、店舗の賃貸借契約を結び、内外装を改装するなどして、開店準備を進めます。
店舗や看板のデザインなどもフランチャイズが指定していることもあるため、特に希望や予算が限られている場合は、本部と相談しておくと安心です。
本部の研修を受講
開業準備の一つとして、本部が開催する研修が用意されていることがあります。営業や経営に関する内容や、基本的なマナーのようなものまでさまざまです。
フランチャイズの加盟店として成功させるためにも、準備を怠らないようにしましょう。
宅地建物取引業免許の申請
開業する店舗が決まったら、宅地建物取引業の免許を申請します。複数の店舗を開店しない場合は、基本的に店舗が所在する都道府県知事へ申請することになります。
手続きや申請に心配があれば、本部に確認するようにしてください。
開業(開店)
開業日(開店日)に合わせて、本部がプロモーションしてくれたり、応援のスタッフを派遣してくれたりすることがあります。
当日はお客様を笑顔で迎えられるように、事前に役割やオペレーションを確認しておくとよいでしょう。
まとめ
不動産業で独立・開業するまでの手順や、メリット・デメリット、注意すべきポイントについて解説してきました。
不動産会社を開業する場合は、事務所(店舗)のレイアウトに条件があり、宅地建物取引士の設置や宅地建物取引業免許の申請など、不動産業ならではの手続きや準備が必要です。
開業準備や運営について不安があり、サポートが必要な方は、フランチャイズへの加盟を検討してみてください。
フランチャイズによっては、加盟金やロイヤリティの安さを売りに、加盟店を募集しているケースもあります。しかしブランド力がほとんどなく、サポート体制が十分でなければ、加盟する意味がありません。
フランチャイズを選ぶ際は、加盟店数や実績、メリットなどをあらゆる角度から比較し、選択することをおすすめします。