企業が人材育成に取り組むうえでは、さまざまなコストがかかります。企業の存続や成長のために人材育成は重要であるものの、コストに悩む経営陣も多いです。この記事では、人材育成にコストをかける必要性やコストの目安について解説します。投入するべきコストと削減するべきコストの詳細もまとめているため、ぜひ参考にしてください。
企業にとって人材育成コストとは
自社の従業員のスキルアップを目的として人材育成に取り組めば、必ずコストが発生します。人材育成として研修を実施するには、企画、準備、実施などさまざまなプロセスが必要だからです。企業にとって人材育成は企業の存続や成長につながる重要なものであり、それにかかるコストは従業員に対する「投資」だといえます。そのため、人材育成コストの負担を惜しまない企業も少なくありません。
しかし、投資したコストに見合う結果を得られないと、企業が損をするリスクもあります。人材育成のためにコストをかけるうえでは、結果についての確認が必要です。たとえば、生産性が向上したり、従業員がより高い成果を出せるようになったりしたかチェックしましょう。
企業が人材育成コストをかける必要性
企業が人材育成にコストをかけるべき理由は、従業員のスキルアップにより、生産性の向上や成果アップなどを期待できるからです。また、人材に対する投資を惜しまない企業だと世間から認知されれば、社会的なイメージの向上も期待できます。
そのため、むやみにコストを削減して人材育成の質が下がる状況は避けましょう。ただし、かけたコストに比例して必ず人材育成の質が上がるわけではないため、質の向上と最適なコスト管理の両方を意識する必要があります。
人材育成で発生するコストの目安
人材育成を行う場合、どの程度のコストがかかるのでしょうか。ここでは、コストの目安について解説します。
従業員1人当たりのコスト平均
産労総合研究所が発表した「2023年度（第47回） 教育研修費用の実態調査」によると、従業員1人あたりに企業がかける研修費用の平均は32,412円でした。2020年度の調査においては、新型コロナウイルス感染症の流行の影響を受け、研修費用の平均が大きく下がっていたものの、回復の兆しがみえています。なお、企業によっては、人材育成に50万円以上のコストをかけているところもあると分かりました。
※参考：
人材育成コストに関する今後の見込み
産労総合研究所の同調査によれば、教育研究費用をこれから増額する見込みがあると答えた企業は、2020年以降増加しています。すでに触れたとおり研修費用の実際の平均も増加傾向にあるため、人材育成にコストをかける企業はますます増えると予想できます。
ただし、世の中全体の働き方の変化に伴って従業員の勤続年数は短くなっており、人材育成コストの費用対効果は得にくくなっている状況です。今後は人材育成コストの管理もさらに慎重に行う必要があります。
企業がかけるべき人材育成コストの種類
人材育成には具体的にどのようなコストをかける必要があるのでしょうか。ここでは、投入するべきコストと削減するべきコストについてそれぞれ解説します。
投入するべきコスト
研修にかかるコストは人材育成の質そのものを左右するため、削減しないほうがよいでしょう。無理に研修費用を削減すると人材育成の質が下がり、求めているような効果を得にくくなります。
人材育成の目的を達成するには、細かい計画を立案し、目的に対応できる講師を選んで依頼する必要があります。コストを抑えようとすると実施したい研修を実現できない可能性もあるため、注意しましょう。
削減するべきコスト
人材育成の質に直結しないコストについては、状況に応じて削減しましょう。たとえば、研修を実施する会場を確保するための費用や交通費などがあげられます。eラーニングやオンラインセミナーを活用すると、そもそも会場を確保するための費用は一切かかりません。また、従業員を外出させず自社に講師を呼んで研修を開催すれば、交通費も抑えられます。
ただし、人材育成の質に関係しないとしても、従業員の負担が増える場合にコストを削減するのはおすすめできません。負担があると従業員の研修に対するモチベーションが低下し、効果が下がる恐れがあります。
人材育成の質を維持しながらコストを削減する方法
人材育成の質を保ちつつコストを削減する方法は、複数あります。以下でくわしく解説します。
人材育成の方法・内容を見直す
人材育成の質を維持しながらコストを減らすには、研修の実施方法、内容、回数などの見直しがおすすめです。人材育成の目的を改めて確認し、必要な研修を実施できているか確認するとよいでしょう。目的に合わない研修を実施している場合、コストをかけても無駄になる可能性があります。
また、リモートワークで出社せず働いている従業員が多いなら、オンラインでの研修開催を検討しましょう。研修のために余計な交通費や人件費などをかけずに済み、コスト削減につながります。
ITツールを導入・活用する
ITツールの活用により開催できる研修方法を取り入れれば、コストの削減につながります。ITツールによる研修方法としては、eラーニングが代表的です。インターネットを通じていつでもどこでも研修や学習ができ、効率的にスキルアップできます。
さらに、リモート研修を実施すれば、会場の確保、資料の準備、交通費などのコスト削減が可能です。従業員も研修へより気軽に参加できるようになります。
人材育成の内容をマニュアル化する
研修を効率的に実施するには、人材育成の内容をマニュアル化することも重要です。マニュアルがないと研修の内容や進め方が属人化しやすいため、担当者によって質に差が生じる恐れがあります。人材育成に関するマニュアルを用意し、質の向上につなげるべきです。マニュアルがあれば情報更新を効率化でき、より計画的に人材育成を実施できます。その結果、研修にかかるコストの削減も期待できるでしょう。
人材育成の費用対効果を上げるポイント
人材育成の費用対効果を上げるには、ポイントがあります。以下でくわしく解説します。
外部に研修を委託する
人材育成のための研修を外部委託すれば、費用対効果が高まる可能性があります。担当者の手間をなくして負担を抑えられるため、研修にかかるトータルコストを軽減できるためです。
人材育成の研修に特化している企業に依頼すると、自社にはないノウハウや専門的な知識などをもとに、より質の高い研修を実現できます。ただし、自社が求めるような成果を出すには、それに対応できる企業を慎重に選定する必要があります。
スキルマップやインセンティブを用意する
人材育成を効率化して質を上げるには、スキルマップを作成する必要があります。スキルマップを使い、時系列ごとに必要な知識やスキルを一覧にまとめると、全体像を把握しやすくなり、各従業員の状況に応じて研修を実施できるようになります。無駄な研修を誤って実施する可能性がなくなり、コスト削減を期待できるでしょう。スキルマップでは従業員の能力も可視化できるため、人材配置にも役立ちます。
また、人材育成の段階に合わせてインセンティブなどを用意すれば、従業員のモチベーションの維持も可能です。効率的な人材育成ができ、離職防止の効果も期待できます。
人材育成コストの削減例
人材育成コストを実際に削減した事例はさまざまあります。ここでは、具体例について解説します。
既存の育成方法を変えてコスト削減
研修を自社で実施していたある企業では、外部の講師に研修を依頼し始めてから従業員のスキルが大幅に向上し、収益アップを実現できました。研修そのものにかかるコストは増えたものの人件費を削減できたため、売上に占める人材育成コストは減少しています。
ITの導入によるコスト削減
ある大手コンビニチェーンでは、集合研修にオンライン研修とeラーニングを活用し、研修にかかる時間と費用の削減に成功しました。オンライン研修やeラーニングなどは、ITリテラシーが低い従業員でも受けやすく、高い効果を得られています。従業員の属性に合わせて必要な研修を実施できるようになり、人材育成のプロセスが効率的になりました。
まとめ
人材育成は企業にとって重要であり、コストを十分にかけて研修を実施する必要があります。外部への委託やITツールの活用なども必要に応じて検討すれば、不要なコストをかけず費用対効果が高い人材育成を実現可能です。
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