人財育成計画とは?人材を人財に育てるため企業ができること

人財育成は企業の成長に欠かせません。人財育成計画の作成によって、従業員の効率的で効果的な育成が可能となります。この記事では、人財育成計画の作成方法や経営戦略との関係性、実行のポイントを解説します。新卒、中堅、管理職など、所属する階層に合わせた計画の例もまとめているので、従業員の教育に役立ててください。

人財育成計画の概要

まずは「人材」と「人財」の違いや、人財育成計画の基本から見ていきましょう。

「人材」から「人財」へ

近年、「人材」ではなく「人財」という言葉を使う企業が増えています。人材は「Human resource」と表記され、直訳すると人的リソースとなります。一方、人財は「Human capital」となり、人的資本を意味する単語です。人財という言葉には「従業員は企業にとっての財産であり、宝として認識している」というメッセージが込められています。

人財育成計画とは

人財育成計画とは、従業員の育成プランを中長期的な視点から組み立てたものを指します。人材育成計画をスムーズに進めるためには、計画の策定段階において理想と現実のギャップを確認し、企業に必要な人財を定義することが必須です。その後で、いつまでに、誰が、どのように育成していくかを具体的なスケジュールに落とし込んでいきます。

人財育成計画と経営戦略の関係

人財育成計画と経営戦略には深い関係があります。人財育成計画を立てるには、まず経営戦略を明確にしなければなりません。経営戦略とは、経営の目的や目標を達成するための計画や方針のことです。経営戦略が決まることで、必要とする人物像が具体化でき、企業の成長を支える人財が育成できます。

人財育成計画の立て方

続いて、人財育成計画の立て方を3つのステップで解説します。

理想と現状の差を把握する

まずは、理想と現状の差を把握するところからはじめましょう。経営戦略に基づいて「どのような状態が理想なのか」といった人物像を具体的にイメージします。理想が定まったら、現在の状況をアンケートやヒアリングを通して多角的に調査を行いましょう。情報が集まってきたら、理想と現状のギャップを測定し、育成計画のゴールとなる目標を設定していきます。

必要な手段を検討する

次に、理想と現状の差を埋めるための手段を検討します。手段の具体例としては、勉強会や研修の開催、OJTの強化などの手法が一般的です。組織としての弱い部分を洗い出し、不足しているスキルは何かを考えることで、最適な手段が選びやすくなります。また、育成の手段は複数あっても構いません。課題ごとに解決策を講じることで、育成の効果は高まります。

実行と改善を繰り返す

人財育成は実行して終わりではありません。人財育成計画は定期的に見直しを行い、改善していくことが大切です。改善点を見つけるには、従業員とのコミュニケーションが欠かせません。実行だけを目的にしないよう積極的に働きかけて、育成の質を高めていきましょう。

人財育成計画に盛り込む要素

ここでは、人財育成計画に盛り込むべき要素を解説します。今回紹介する以外にも、自社に合った要素を取り入れて育成計画を作成していきましょう。

企業の理念・ビジョン

人財育成計画には、企業の理念やビジョンを盛り込みます。企業の理念やビジョンは、すべての計画の原点となる方針です。一般的には、企業理念、ビジョン、経営戦略、経営計画の順に企業が進むべき方向を決めていきます。理念やビジョンによっても必要となる人財は異なるため、ズレが生じないよう計画することが大切です。個人の目標達成が、企業の理念やビジョンの実現につながるような計画を立案しましょう。

具体的な人物像

具体的な人物像を設定することで、社内で共通認識を持ちながら計画を推進できます。求められる人物像が明確化されていれば、従業員にとっても努力の方向性が分かりやすく、目の前の仕事に前向きに取り組みやすくなります。3年後、5年後、10年後に目指す企業の姿をイメージしながら、必要な人財の条件を考えていきましょう。

人財育成計画の作成で必要なスキル

人財育成計画を作成するうえでは、次の3つのスキルがあるとスムーズに進められます。

現状を正しく把握するスキル

人財育成計画の作成では、正しい現状把握スキルが求められます。現状が正確に分かっていないと、課題達成にかかる負担を適切に検討できません。たとえば「専門資格の保有率80%を目指す」という計画を立てたとしても、会社の利益につながらなければ時間とコストが無駄になってしまいます。本当に必要な人物像を見極めるためにも、現状を把握するスキルは不可欠です。

社内で連携をとるスキル

社内で連携をとるスキルがあると、質の高い人財育成計画が作成できます。人財育成計画は、企業理念やビジョン、経営戦略を軸に作成していきますが、現場の意見を反映させることも大切です。理想ばかりを詰め込んでしまうと、現場で働く従業員のモチベーションは低下します。人財育成計画は、経営者の意向を盛り込みつつ、現場の理解も得られるような内容を心がけましょう。

計画を策定するスキル

人財育成計画にかかわらず、目標を立てて実行していく際には、論理的な思考に基づいて計画を策定するスキルが必要です。計画策定スキルは、経験を積むことで磨いていくことができます。はじめは、思考の整理に役立つフレームワークを活用するのもおすすめです。

人財育成計画の現場では、SMARTの法則やHPI (Human Performance Improvement)などのフレームワークが使われています。

人財育成計画に役立つサンプル

人財育成計画に役立つサンプルとして、次の2つを紹介します。

厚生労働省「職業能力評価基準」

厚生労働省の「職業能力評価基準」は、仕事に必要な知識、技術・技能、職務遂行能力を整理したもので、人材のレベル別に評価シートが用意されています。営業、情報システム、マーケティングなどの事務系職種、外食産業やアパレル業などの業種ごとにサンプルのダウンロードが可能です。サンプルはあくまで標準的な内容となっているため、自社に適した形にカスタマイズして利用しましょう。

日本の人事部「育成計画書」

2つ目は、日本の人事部の「育成計画書」です。日本の人事部とは、HR(Human Resources)領域に特化したプラットフォームで、人財育成計画に関する資料も用意されています。育成計画書は表形式のテンプレートで、育成項目・必要スキル・現状評価・育成方法・成果の測定方法・達成度の6つの項目で管理されています。

シンプルなテンプレートですが、実施すべきアクションと進捗が簡単に把握できる仕組みになっています。

人財育成計画の例

ここでは、人財育成計画の例を4つ紹介します。それぞれの事例を参考にしながら、育成計画を組み立てていきましょう。

新卒の例

新卒の育成計画では、社会人としての基礎力を身につけることを重視します。入社後は実務に入るよりも前に、集合研修で基本的な知識を学んだあと、OJTでスキルの定着を目指します。新卒の人財育成計画は、従業員の定着率にも大きく影響するため、自社の仕事にやりがいや将来性を感じてもらえるような研修を計画しましょう。

中堅の例

中堅の育成計画では、マネジメント能力や専門スキルを強化します。業務との両立を考えるなら、オンライン研修の活用もおすすめです。オンラインによるスキル研修や専門性の高いポジションへの異動により、従業員の成長を促します。中堅の育成計画では、それぞれのスキルに合わせた目標を設定し、無理のないスケジュールを立てることが大切です。

管理職の例

管理職の育成計画では、経営層に近い視点で組織全体のことを考える能力を高めます。組織運営やリーダーシップ論を学ぶだけでなく、ロールプレイングなどで実践的なスキルとして身につけることが重要です。管理職の研修は社内で実施することもできますが、外部のビジネススクールに委託すれば、より高度なスキルを習得できます。

役員の例

人材育成は役員も対象です。役員は将来的に社長を務める可能性があるため、経営スキルの向上につながる育成計画を策定します。役員の人財育成では、事業の後継者を育成する「サクセッションプラン(後継者育成計画)」を用いるのが一般的です。社長としての能力やスキルのある人財を選出し、育成するには時間がかかるものの、後継者が不在となるリスクを軽減できます。

人財育成計画の実行ポイント

最後に、人財育成計画を実行するためのポイントを2つ解説します。これらのポイントを意識して、スムーズな計画の実行を目指しましょう。

実現可能な目標にする

人財育成計画は、現実的で実現可能な目標にすることが大切です。理想と現状の差が大きすぎると、従業員のモチベーションが低下する恐れがあります。努力によって達成できる目標なら、従業員は前向きな気持ちで実行と改善に取り組めるうえ、企業としても優秀な人財を効率的に育成できます。

人事と管理職で連携する

人財育成計画の実行時は、人事と管理職での連携を心がけましょう。従業員が身につけるべきスキルの検討は管理職の役割でもあります。人事と管理職で定期的にフィードバックを実施し、現場での課題を共有しながら、自社の将来を支える人財の育成を目指しましょう。

まとめ

人財育成計画によって、企業の将来は大きく左右されます。優秀な人財を育成できても、企業のビジョンや経営戦略と方向性が違っては、高い効果は得られません。自社の現状を分析し、理想の人物像を描きながら、最適な人財育成計画に落とし込んでいきましょう。

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