中小企業をはじめとした企業において人材育成は、永続的な経営を実現するために重要だと考えられています。しかし、人材育成に課題を抱えている中小企業は少なくありません。そこで本記事では、中小企業における人材育成の実態と課題を解説します。人材育成の問題を解決するための施策についても見ていくので役立てください。
中小企業における人材育成の実態
まずは、中小企業における人材育成の実態を確認します。人材育成が必要とされる背景や、状況を見ていきましょう。
人材育成の重要性が高まっている
中小企業では近年、人材育成の重要性が高まっています。この背景には、少子高齢化による慢性的な人材不足、転職市場の活性化といった社会的な問題があります。人材不足で求職者の母数が少ないため、中小企業は採用活動が難しくなっている状況です。加えて、採用した従業員の育成にも取り組まなくてはいけないにもかかわらず、人材が自社に残り続けるとは限りません。こうした背景から、人材育成の重要性がより高まっています。
人材育成に取り組んでいない中小企業は多い
人材育成の重要性が高まっている一方で、教育のための時間や予算が捻出できないなどの理由で、なかなか取り組めていない中小企業も少なくありません。自社の人材育成を見直す際は、現在注力できない理由を確認し、解決する必要があります。
中小企業が抱える課題｜人材育成がなかなか進まない理由とは
では、中小企業で人材育成がなかなか進まない理由には、どのようなものがあるでしょうか。この章で確認してみましょう。
育成できる人材がいない
大企業では、人材育成を担当する専門の部署が設置されていることが多いです。しかし、中小企業では人材育成を専門とする部署が設置されていないことも、めずらしくありません。
また、優秀な従業員がいたとしても、その従業員が他の従業員を育成できるとは限らない点に注意が必要です。特定の従業員が持つ知識やノウハウを言語化し、他の従業員を指導・定着するまでには時間がかかります。さらに成果を実感するまでに時間がかかることも、中小企業で人材育成がなかなか進まない理由の1つです。
人材育成に関するノウハウが十分でない
これまで従業員個人の経験・スキル頼りだった組織は、本格的に人材育成に取り組んだことがない場合もあります。たとえ中小企業としての歴史が長くても、人材育成のノウハウが蓄積されていない可能性が高いです。
人材育成に時間や予算を割くことが難しいために、OJTで業務を教える中小企業も多いですが、伝え方やスキルなどに偏りが出る可能性があります。教えた際の情報が残っておらず、他の従業員を教育するときに役立つ、ノウハウが十分にないケースもあるでしょう。
教育時間を確保することが難しい
中小企業は大企業と比較すると、従業員数が多くありません。このため、1人の従業員に割り振られた業務量や業務内容が多岐にわたり、本業に追われてしまい、人材育成のための時間を確保できないケースも多いです。
人材育成に取り組む際、会社は育成プログラムなどの策定に力を入れがちですが、それを活かせる環境が整っていなければ、人材育成は進まない点に注意が必要です。
予算の確保が難しい
人材育成に取り組み、活用していくためにはまとまった予算が必要です。しかし、中小企業のなかには人材育成のための予算を、捻出できない中小企業も少なくありません。
経済的な余裕がなければ、人材育成に取り組むことは難しいです。無理をして予算を捻出したことにより、経営難に陥ることもあります。
できるだけ予算を抑えた人材育成を考えると、必然的にOJTとなるケースが多いです。
人材が定着しないため教育できない
転職市場が活性化している現代は、人材の流動性が高いです。このため、人材の定着率が低い中小企業であれば、「人材育成に時間とお金をかけても、従業員が辞めてしまえば無駄になってしまう」という考えになりやすいです。
人材が定着しない中小企業では、本業に関する知識・スキルはもちろん、人材育成の知識・スキルも蓄積されないことも問題になります。
中小企業が人材育成に取り組むときのポイントとは
人材育成はやみくもに取り組むのではなく、ポイントを押さえたうえで進めていくことが大切です。ここでは、中小企業が人材育成に取り組む際の5つのポイントを解説します。
採用の段階から人材育成を意識する
自社における人材の定着率が低い場合は、まずは採用のミスマッチが発生していないか確認しましょう。なぜなら、採用のミスマッチは将来従業員が離職を考える原因になりやすいからです。自社の選考の合否要件、面接内容などを見直してみましょう。
また、求職者個人の性格や志向にも目を向けます。求職者が持つ知識や経験も大切ですが、採用の時点で自社に合う人材であるか判断することも重要です。「求職者が入社した後に自社で長く働けるか」を考えながら、採用を進めるとよいでしょう。
中小企業ならではの強みを把握する
以下に触れながら説明
・中小企業は大企業にはない強みを持っている
・例：経営層との距離が近い、従業員個人の成長とスキルアップが業績に直結しやすい、役割が明確 など
・強みを活かした人材育成を考える
自発的に行動できる環境作りに力を入れる
人材育成の担当者がいなかったり、時間の確保が難しかったりする場合は、従業員の自主性の高さがポイントになります。このため、従業員が自発的に行動できるような環境を整えることが大切です。
例えば、従業員が自分で不明点を上長に確認しやすい雰囲気にする、業務に必要な情報を調べたり、学んだりできる環境を整えるとよいでしょう。会社として自主的に行動する従業員をフォローするための、体制作りに力を入れます。
OJTの特徴を把握しておく
OJTとはOn-The-Job Trainingのことで、実務をこなしながら人材育成に取り組めます。このため、個人の能力に合わせた教育ができたり、現場の人間関係の構築に役立ったりといったメリットがあります。会社としては、時間・コストを抑えやすい点も大きなポイントです。
ただし、OJTは現場任せになりがちで、教育を担当する従業員の業務が滞りやすいなどのデメリットもあります。
見える化を意識する
自社が求める理想の人物像を見える化し、人材育成の方向性を定めることも大切です。加えて、従業員が現状持つスキルを洗い出せば、育成計画が立てやすくなるでしょう。
さらに、教育方針や育成手法を言語化することで、会社全体で人材育成のノウハウを共有できるようになります。見える化を意識した人材育成を進めるだけでなく、定期的に人材育成中の従業員の変化を確認して、新しい課題・改善策を見出すこともポイントです。
スムーズに人材育成を進めたいときに役立つ取り組みとは
人材育成に取り組むことが難しい中小企業で、スムーズに進めたいときに役立つ5つの取り組みを解説します。
テーマを明確にする
人材育成に取り組む前に、テーマを明確にしておきましょう。人材育成に取り組んでから効果が出るまでには時間がかかるため、中長期的なテーマを設定することが大切です。
会社としてテーマを設定したら、続いて従業員にテーマに即した目標を設定してもらうとよいでしょう。このとき設定する目標は、「頑張れば実現できそうなレベル」とすることがポイントです。あまりに目標のレベルが高いとその従業員がプレッシャーに感じてしまい、人材育成につながらないので上長などがサポートするようにします。
評価制度・体制を整備する
自社における人材の評価制度・体制を整備しましょう。これにより従業員自身が成長を実感しやすくなり、モチベーションが上がりやすくなります。
人材の評価制度・体制は年功序列に基づくものでないものにしましょう。従業員個人の能力や成果を公平かつ明確に評価できる制度にすることで、従業員の納得感が高くなります。
また、上長から定期的に、フィードバックを受けられる機会を設けることもおすすめです。
属人化している業務をマニュアル化する
属人化とは、特定の従業員のみが業務の内容や手順などを把握している状態です。他の従業員がその業務を担当することができず、特定の従業員の不在時・退職時に業務が滞ってっしまう問題点があります。
属人化を防止するためには、知識やノウハウをまとめたマニュアルを作成するなどの対策があります。作成したマニュアルは人材育成時の軸にもなるので、教育を効率良く進められるでしょう。
助成金・補助金を活用する
前述しましたが中小企業のなかには、人材育成のコストを捻出できずに困っているところも少なくありません。こうした場合は、政府の助成金・補助金制度を活用することをおすすめします。
中小企業が人材育成に活用できる助成金・補助金の例としては、小規模事業者持続化補助金、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金などがあります。利用できる期間や条件などが設定されているので、事前に確認しておきましょう。
他社のツール・サービスを活用する
本業が忙しいなどの理由で、自社のみで人材育成を進めることが難しい場合は、他社のツールやサービスを活用してみましょう。例えば、ネット環境があればどこでも学べるeラーニングなどが便利です。
また、人材教育に特化した企業などが実施する研修や講習に申し込む方法もあります。事前に打ち合わせすることで、研修や講習の内容を自社に特化したものに変更できる場合もあるので、確認してみましょう。
まとめ
人材不足や転職市場の活性化などを背景に、人材育成の重要性が高まっている状況ですが、なかなか取り組めていないという中小企業も少なくありません。自社だけでの対応が難しい場合は人材育成を専門とする、他社のツール・サービスを活用する方法も検討してみましょう。
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