経営戦略と事業戦略は違う?規模別・内容別に見る経営戦略の種類やフレームワークなど紹介

企業が競争社会で生き抜くには、全従業員の指針となる戦略を立てる必要があります。ビジネスの場で多用される「戦略」という言葉ですが、みなさんはその目的や重要性をご存知でしょうか。

この記事では、規模別・内容別に見る経営戦略の種類やフレームワークを紹介します。経営戦略と事業戦略の違いや、戦略の立案に役立つ情報もまとめているので、ぜひ参考にしてください。

経営戦略と事業戦略の違い

経営戦略とは、企業が掲げているビジョンや目的を達成するための中長期的な方針のことです。経営戦略を立てることで、企業活動における目標を明確にし、継続的な成長を目指します。

事業戦略は、経営戦略を土台に立案する戦略です。単一の事業のみを展開している企業では「経営戦略≒事業戦略」となるケースもありますが、複数の事業を手掛けている場合は事業ごとの戦略を策定します。

規模別に見る3種類の経営戦略

経営戦略は、規模別に「全体戦略」「事業戦略」「機能戦略」の3種類に分けられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.全体戦略

企業全体の方向性に関わる戦略で、トップが策定するトップダウン方式や、経営企画部門が担当するボトムアップ方式などがあります。経営戦略や成長戦略と呼ばれることもあり、後ほど紹介する「事業戦略」「機能戦略」のベースとなる戦略です。全体戦略では、新規参入や撤退、事業ごとの資源分配などを計画していきます。

2.事業戦略

事業戦略とは、事業分野ごとに立てる戦略です。単一事業の企業は「全体戦略≒事業戦略」ですが、複数の事業を展開している企業では、全体戦略にもとづいて事業単位の戦略を立案します。全体戦略で述べられた基本方針を踏まえ、自社の強みを活かして競合他社に勝てる戦略を詳細に設定することが大切です。

3.機能戦略

現場レベルで立てる戦略で、「企画」「営業」「マーケティング」などの機能ごとに具体的な取り組みを検討します。機能戦略は、事業戦略にもとづいて立案します。策定のポイントは、全体戦略、事業戦略、機能戦略が一貫した内容になっているかどうかです。一貫性を持たせることで、企業として目指すべき方向が明確になり、全社的な成長が期待できます。

経営戦略が求められる理由

企業の安定した経営を実現するためには、経営戦略が欠かせません。ここでは、経営戦略が求められる理由を解説します。

どの業界にも自社の競合がいるため

世の中が便利になった一方で、企業としては「どの分野でも自社の競合がいる」という状況に悩まされることも増えたのではないでしょうか。世界中の企業が競合となりうるなかで、自社でしかできない独占的な事業は、ほぼ存在しなくなりました。

同時に、「大量生産大量消費」の手法で、商品やサービスが簡単に売れる時代ではなくなっています。目まぐるしく変化するVUCA時代では、自社の強みやリソースを活かした戦略を立てないと、企業が淘汰されてしまうといった懸念が高まっています。

※VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとった用語です。

目標が明確になり効率よくPDCAを回せるため

全体戦略、事業戦略、機能戦略といった規模別の目標を立てることで、PDCAを効率よく回せます。PDCAとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Act(改善)」の4つの工程で構成されたサイクルです。段階ごとの目標が明確になり、PDCAがうまく機能することで、継続的な業務改善が図れます。

内容別に見る経営戦略の種類

経営戦略には、次の5つの種類があります。

1.差別化戦略

2.集中戦略

3.価格戦略

4.多角化戦略

5.グローバル化戦略

差別化戦略、集中戦略、価格戦略の3つをまとめて、「ポーターの3つの基本戦略」と呼びます。ポーターの3つの基本戦略は、アメリカの経営学者マイケル・ポーターが提唱した、競争優位性を示すためのフレームワークです。

1.差別化戦略

競合と明確に差別化できる商品やサービスを市場に投入する戦略です。うまく差別化できれば、長期的な顧客の獲得につながります。希少価値の高い商品やインパクトのあるサービスは、SNSとの相性もよく、拡散による認知度の向上も期待できます。

2.集中戦略

勝算が高い分野に資源を集中させる戦略です。集中戦略を立てる前に自社のリソースの洗い出し、強み・弱みの分析を行っておくと、計画の精度を高めることができます。

3.価格戦略

競合には困難なレベルの低価格で商品を販売する戦略です。コストリーダーシップ戦略とも呼ばれ、中小企業よりは大手企業に向いています。ただし、行き過ぎた価格戦略は、資金がショートするリスクがあるため注意が必要です。

4.多角化戦略

既存事業をベースに、複数の事業を展開する戦略です。多角化戦略は、リスク分散効果も期待できます。経営資源やノウハウ、既存事業の顧客とのつながりを横展開できるのも多角化戦略のメリットです。

5.グローバル化戦略

既存事業を世界レベルに成長させる戦略です。製造業を中心に採用されている手法で、市場の拡大はもちろん、人件費の削減や輸送コストの最適化を実現し、世界の優秀な人材を確保できるチャンスも得られます。

経営戦略を考えるポイント

効果的な経営戦略を立てるには、次の3要素に関する分析が重要です。

・外部環境

・内部環境

・自社の優位性

外部環境では競合の脅威や社会情勢の変化、内部環境では自社の組織体制や技術力などを分析します。自社の優位性としては、商品の独自性やブランド力といった強みが挙げられます。3要素の分析にフレームワークを活用することで、客観的でロジカルな判断がしやすくなります。

経営戦略立案に役立つフレームワーク

ここからは、経営戦略立案に役立つ7つのフレームワークの特徴を解説します。

1.SMARTの法則

SMARTの法則は、目標設定に役立つフレームワークで、次の5つの要素で構成されます。

・Specific(具体性)

・Measurable(計量性)

・Achievable(達成可能性)

・Related(関連性)

・Time-bound(期限)

たとえば、「売上アップを目指す」という漠然とした目標にSMARTの法則に当てはめることで、「1年以内に競合A社からシェアを10%奪還する」といった具体性のある計画が立てられます。

2.アンゾフの成長マトリクス

アンゾフの成長マトリクスでは、市場と製品について、既存と新規の2軸から自社の成長につながる戦略を考えます。戦略的経営の父と呼ばれる経営学者、イゴール・アンゾフが提唱したフレームワークで、外部環境と内部環境、両方の分析で役立ちます。

3.3C分析

3C分析では、次の3つの要素から事業の成功要因を明らかにしていきます。

・顧客(Customer)

・競合(Competitor)

・自社(Company)

シンプルなフレームワークながら、外部環境と内部環境、両方の分析が行えます。

4.SWOT分析

SWOT分析では、次の4つの要素を組み合わせて分析を行います。

・Strength(強み)

・Weakness(弱み)

・Opportunity(機会)

・Threat(脅威)

経営戦略はもちろん、販売戦略や人事戦略など幅広いシーンで活用できる有名なフレームワークです。外部環境と内部環境の両方を分析できます。

5.PEST分析

PEST分析では、4つの要素から自社の置かれた状況を把握できます。

・Politics(政治)

・Economy(経済)

・Society(社会)

・Technology(技術)

外部環境の分析に用いられるフレームワークで、国内外の幅広い事柄が対象となります。マクロの視点から自社への影響を考えることができますが、対象範囲が広いほど分析に時間がかかります。

6.PPM分析

PPM分析では、次の4つのカテゴリーに事業や製品を配置して、市場における立ち位置を確認します。

カテゴリー 市場成長率 市場シェア
花形 高い 高い
金の成る木 低い 高い
問題児 高い 低い
負け犬 低い 低い

PPMとは、Product Portfolio Management(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)の略称で、経営資源の配分を考えるときに重宝する分析手法です。たとえば、カテゴリーを分けることで、市場成長率の低い「金の成る木」の利益を、将来的な成長が見込める「問題児」に振り分けるなどの戦略が立てられます。

h3:7.VRIO分析

VRIO分析では、次の4つの要素で自社の経営資源を分析します。

・Value(経済的価値)

・Rarity(希少性)

・Inimitability(模倣困難性)

・Organization(組織)

内部環境の分析に特化したフレームワークで、自社の商品やサービスにどのような優位性があるのかを評価できます。

事業戦略の基本的な手順

事業戦略を策定するときの基本的な手順を4つのステップで紹介します。

1.事業の目標を明確にする

はじめに、事業の方向性や目的を共有し、数値目標を決定します。たとえば、営業戦略を考える場合は、売上や利益、契約件数などの客観的に評価しやすい項目を設定すると、目標の達成度を正確に測定することが可能です。目標設定には、上述したSMARTの法則が役立ちます。

2.現状分析する

続いて、先ほど紹介したフレームワークを使って、外部環境と内部環境を分析します。複数のフレームワークを組み合わせる方法もありますが、分析する項目が増えすぎると負担が大きくなるため注意が必要です。

3.方向性・実現可能性を評価する

外部環境と内部環境の分析結果を踏まえて、自社の優位性を発揮できる戦略に落とし込んでいきます。はじめから1つに絞るのではなく、複数のパターンを考えるようにすると、戦略の精度を高めることが可能です。いくつかのパターンを出したら、方向性や実現可能性、期待できる成果などを比較し、最適な戦略を抽出します。

4.施策を実行する

最後に、具体的なビジネスモデルを考えて行動に移します。実行する施策の数が多い場合は、重要度と緊急度の2軸から優先順位をつけるとスムーズです。

まとめ

経営戦略を策定することで、企業が目指すべき方向性が明確になり、将来の予測が困難なVUCA時代にも対処しやすくなります。経営戦略に役立つフレームワークを活用しながら、「外部環境」「内部環境」「自社の優位性」を分析し、ロジカルな視点で事業を展開していきましょう。

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