事業承継ガイドラインの要点を解説|不動産業こそ事業承継が重要な理由

「事業承継ガイドライン」は、中小企業庁が発行する事業を円滑に承継するための手引きです。後継者問題や事業の承継に悩む不動産経営者に向けて、事業承継ガイドラインの要点や注意点をわかりやすく解説します。事業承継を進めるには、何から手を付ければ良いかが明確になります。円滑な事業承継のヒントとして、記事をご活用ください。

中小企業庁「事業承継ガイドライン」とは

はじめに、事業承継ガイドラインの概要を解説します。

事業承継ガイドラインの目的

事業承継ガイドラインは、雇用や技術・技能の担い手として重要な役割を果たす中小企業や小規模事業の経営者に、事業承継の意義と課題を周知するために策定されました。

事業承継を円滑に完了するために必要な取り組みのほか、課題と対策、相談先も記載されています。

事業承継ガイドラインの3つの柱

事業承継ガイドラインは、次の3点が柱となります。

・事業承継に早期に取り組む意味と重要性

・円滑に事業承継を進める5つのステップ

・地域で事業承継を支援する体制確立の必要性

事業承継ガイドラインは、実務的な解説が充実しています。事業承継を支援する専門家の活用も、期待されています。

事業承継ガイドラインがつくられた背景

事業承継ガイドラインが策定された背景には、事業承継が円滑に進まない中小企業の現状があります。

経営者の高齢化や事業継承の在り方の多様化などが、事業継承を阻む要因です。しかし、中小企業の事業承継が進まなければ、雇用や技術の存続が危ぶまれます。

中小企業・小規模事業者の廃業を回避し経済への打撃を最小化するために、事業承継ガイドラインは生まれました

不動産業に占める中小企業の割合

国土交通省によると、不動産業の9割以上が中小規模の事業者です。従業者10名未満の事業所数は全体の9割以上に上ります。

※参考:不動産業ビジョン2030 参考資料集|国土交通省

不動産業就労者の高齢化も明らかになりました。2015年時点で、60歳以上の不動産就業者の割合は約5割に達しています。

不動産業は、中小企業・小規模事業者が大半を占めます。就業者の高齢化もあいまって、事業承継が課題になりやすい業界です。

不動産事業の永続的な発展に、事業承継は避けては通れません。

事業承継ガイドラインの内容

事業承継ガイドラインの構成に沿って、内容を詳しく解説します。

1.事業承継の重要性について

中小企業経営者の平均年齢は1990年以降上昇を続け、事業承継は喫緊の課題です。ところが、後継者難という問題が降りかかります。実際、後継者難のために廃業を考える経営者も、3割近くいます。事業の業績が決して悪くないにもかかわらず、廃業となるケースも見られます。

早くから取り組めば後継者問題を解決でき、事業承継を完了できる可能性が高まるでしょう。

2.事業承継に向けた準備の具体的な手順

事業承継は、次の5つのステップで進められます。

<事業承継の5ステップ>

1.事業承継に向けた準備の必要性の認識

2.経営状況・経営課題等の把握(見える化)

3.事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)

4.事業承継計画の策定

5.事業承継・M&Aの実行

5つのステップそれぞれの具体的な内容は、後述します。

3.事業承継の形態による課題と対応策

事業の承継先は、「親族・従業員・社外」の3つです。誰に事業を承継するかにより、課題が変わります。

親族への承継では、多額の税金負担が課題になります。従業員など親族外への承継では、承継者が必要な資金の準備に苦労する場合もあります。

承継先ごとに生じる課題について詳しくは、後ほどまとめます。

4.事業承継を円滑に進めるための手段

事業承継の円滑な進行に役立つ手段は、次の4つです。

・種類株式の活用

・信託の活用

・生命保険の活用

・持株会社の設立

事業承継ガイドラインには、それぞれの手法の具体的な進め方も解説されています。

5.個人事業主の事業承継について

法人と同様の課題のほか、個人事業主特有の事業承継の要点が2つあります。

・会社ではなく、個人に対する信頼関係が強いこと

・個人事業主に多い親族内承継を前提にした準備を進めること

個人事業主との取引は、個人事業主本人に対する信頼が前提になります。事業承継の際は信頼や知的財産の確実な承継を大切にしましょう。

6.中小企業の事業承継をサポートする方法と機関

事業承継の第一歩は、身近な支援機関への相談から始まります。以下を参考に、事業承継の悩みを打ち明けてみましょう。

・金融機関

・商工会、商工会議所の経営指導員

・顧問税理士

・顧問弁護士

・顧問会計士 など

専門家が相互連携し、総合的にサポートする体制も構築されつつあります。

事業承継に際して読んでおきたい関連資料

中小企業庁が作成している、事業承継に関する3つの資料を紹介します。

事業承継マニュアル

「事業承継マニュアル」は、事業承継の具体的な解説書です。事業承継計画の立て方と後継者の育成方法、事業承継に伴う課題と対策の3つが柱となります。

事業承継ガイドラインより平易な表現で、図表やイラストを多用しわかりやすく解説されている点が特徴です。

事業承継ハンドブック20問20答 経営承継円滑化法対応版

「事業承継ハンドブック20問20答 経営承継円滑化法対応版」は、事業承継ガイドラインから派生した疑問をQ&A形式で解説する電子冊子です。

事業承継計画の立て方や資金調達の課題など、事業承継で直面する課題への対策が簡潔に解説されています。

会社を未来につなげる−10年先の会社を考えよう−

「会社を未来につなげる−10年先の会社を考えよう−」は事業の承継や永続的な発展に必要な、経営の見える化や磨き上げの重要性を啓蒙するパンフレットです。

自社の10年先を考えたときに不安になりやすいポイントが具体的に提示され、今からできる対策がまとまっています。

事業承継ガイドラインが定める「事業承継5ステップ」をさらに詳しく

事業承継ガイドラインで解説されている、事業を円滑に承継するための5ステップを詳しく解説します。

1.経営者が事業承継の必要性を認識し、準備を始める

経営者自身が事業承継の課題を認識することが、第1ステップです。

国内企業数の99%を占める中小企業が、年間に5万件近く廃業しています。事業承継は、決して他人事ではありません。

事業承継の意を決しても、後継者を見つけ育成する間に、10年はゆうにかかるケースもあります。先を見据え、経営者が60歳になったころから着手するとベターです。

※参考:事業承継ガイドライン(第3版)|中小企業庁

2.経営状況や経営課題を可視化する

事業承継にあたり、自社の経営状況と経営課題を明確化しましょう。文書にし、見える形にして関係者と共有します。まとめたい項目の一例は、以下のとおりです。

・資産・負債

・知的資産

・自社の強み、弱み

・後継者問題

・相続税対策(親族内承継の場合)

経営者が、経営のかたわらまとめあげるのは至難の業です。積極的に専門家を頼り、アドバイスを受けながら完成させます。

3.事業承継に向けて経営を改善する

自社の課題がまとまったら、経営改善に着手します。事業承継を円滑に進めるためには、後継者が「引き継ぎたい」と感じる会社になっていることが重要なためです。

事業の競争力強化や職務権限の明確化をはじめ、社内の規定やマニュアルも明瞭にします。暗黙知の多い会社ほど、この工程が重要になります。

4-1.親族や従業員に承継する場合は事業承継計画を策定する

経営者の親族や従業員など、会社のこれまでを知っている人に承継する場合、中長期的な事業承継計画を立案します。

経営権と資産の承継に注目しがちですが、会社の価値には取引先からの信頼や知的財産、会社の理念やビジョンも影響します。事業に対する思いや価値観も承継できる計画を立てましょう。

4-2.社外に事業承継する場合はM&Aを実施する

社外への事業承継は、M&Aを実施します。専門の仲介機関に依頼し、適切にサポートを受けながら進めます。

M&Aにはさまざまな手法があります。経営者の希望ができるだけ通るよう、積極的に相談しましょう。

5.事業承継が完了する

M&Aはもちろん、親族・従業員への承継でも税務や法務の対策が必要になります。顧問弁護士・税理士など、専門家のサポートを受けながら、完了させましょう。

事業を承継する対象別の課題と対策

事業は「誰に」承継するかによって、異なる課題が生じます。親族と社内人材、そして社外に承継する場合に分けて、課題と対策を解説します。

事業を親族に承継する場合

事業を経営者の親族に承継する場合、次の課題が発生します。

・税負担への対応

・株式や事業用資産の分散防止

・債務の承継への対応 など

事業承継で生じる税負担には、さまざまな特例があります。上手に活用すれば、税負担を相当に抑えることが可能です。

また後継者は意思を確認し、時間をかけて価値観をすり合わせ教育します。

事業を自社の役員や従業員に承継する場合

事業を社内の人材(役員、従業員など)に承継する場合は、後継者側の資金準備が課題になる可能性があります。株式や事業用資産は有償での譲渡となるケースが多いためです。

解決策としては、金融機関からの借入れや後継者候補の役員報酬の引き上げなどが考えられます。

あわせて従業員から経営者へと、意識を変革する教育も施しましょう。

社外承継を目指しM&Aを実施する場合

社外資本とM&Aによって事業承継を実施する場合、M&Aの成立とともに、M&A後の経営をいかに安定させるかも課題となります。経営が軌道に乗るまでは、譲渡側(旧経営側)が経営にかかわれる関係性を構築しておくことも重要です。

また情報漏洩は、M&A不成立の要因となります。無事に完了するまでは、情報が漏れないよう注意が必要です。

事業承継の相談先

事業承継に困ったときの相談先には、以下があります。

・地域の商工会議所や商工会

・取引のある金融機関

・税理士、弁護士、公認会計士 など

相談事業やM&Aのマッチング支援を行う事業引継ぎ支援センターも、活用してみましょう。専門家が協働し、地域の事業承継を継続的に支援する体制もつくられつつあります。

事業承継ガイドラインには、各相談機関の連絡先も記載されています。

まとめ

事業承継ガイドラインは、中小企業や小規模事業者の事業承継を成功させる手順をまとめた資料です。事業承継は、先送りにしても解決できません。経営者が1歳でも若いうちに着手し、必要な準備を入念に進めて初めて成功します。

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