事業承継における対策とは?必要性や方法、ポイントなど徹底解説

少子高齢化や都市部への人口集中などの影響で、多くの中小企業が後継者問題に直面しています。事業承継したくても、後継者がいないため進められないという企業も多いでしょう。

また、適切な後継者選びはもちろん、円滑な事業承継のためには、事前のトラブル対策も必要す。

この記事では、事業承継を考えてる企業向けに、対策や方法、成功させるためのポイントなどについて詳しく解説しています。ぜひ、参考にしてください。

事業承継とは

事業承継(じぎょうしょうけい)とは、企業や事業の現経営者が、次世代の後継者を見つけ、事業や企業資産を引き継ぐ取り組みのことです。

事業承継は、後継者だけでなく、従業員や相続人にも影響がでるほか、法的な対応も必要となるため、成功に導くには最適な資産分配や適正な書類作成などの対策が必要です。

事業承継対策の3つの必要性

事業承継をする前に、対策をしておくことの必要性について、以下で解説します。

1.会社の存続のため

事業承継は、企業や事業を存続させるために実行します。そのため、これまで経営者が蓄積してきたノウハウや経営スキルなども後継者に引き継ぐ必要があります。

承継後も問題なく事業を存続させていくためには、事前に事業承継対策として、後継者の育成にも力を入れなければなりません。後継者の育成には、少なくとも数年程度の期間を要します。

2.相続トラブル解消のため

経営者の相続人が複数人存在する場合、相続に関するトラブルが生じる可能性があります。相続でのトラブルは、資産の分配で不平不満が出たり、株式の取り合いになって分散してしまったり、会社の経営に支障をきたす事態を引き起こすかもしれません。

事業承継で生じる余計なトラブルを回避するためには、事前に事業承継対策を講じることが重要です。

3.税金問題を解決するため

事業承継では、企業価値によって大きな額の資産が動くため、税金の問題が大きな懸念となりやすく、対策が必要とされています。

税金に関する問題に対策としては、相続税・贈与税に関する優遇措置が適用される「事業承継税制」の利用が代表的です。従来利用要件が厳しかった制度ですが、2018年の改正で緩和され、より多くの中小企業が利用しやすくなっています。

事業承継が必要な3つの会社パターン

事業承継は、完了するまでにはそれなりの期間を要するため、早めに対策などの準備が必要です。ここからは、事業承継に取り組む必要性が高い3つの会社パターンをご紹介します。

1.後継者の不在に悩んでいる会社

事業承継の大きな目的は、後継者問題の解消です。昨今、従業員の高齢化により後継者がいないことが原因で、後継者問題を抱える中小企業が増えています。後継者不在のままで放置すると、経営者が病気や事故などにより引退したり、突然亡くなったりした場合に、廃業を余儀なくされてしまいます。

企業の廃業を回避し、存続させていくためには、後継者の育成や選定などの対策を早期に進め、事業承継に向けた積極的な取り組みが必要です。

2.経営者の大きな影響力がある会社

中小企業のなかでも従業員数が少ない企業では、経営者のリーダーシップに強く依存している傾向があります。こうした企業では、経営者に何かあったときに意思決定が遅れ、企業の存続に支障が出てしまう恐れがあります。そのため、予め後継者を選定したうえで、事業承継対策を進めておく必要があります。

また、経営者のワンマン経営になっている場合、周囲からは事業承継対策を提案しにくい傾向があるため、経営者自身が主導して事業承継対策を進める必要があります。

3.相続人が2人以上存在する会社

複数の相続人がいる場合、資産を公平に分配するには、自社の資産についてしっかり把握しておくなどの対策が必要です。特に株式や不動産などの形のある資産は、価値の評価が難しいため、話し合いなどで予め納得いく形を取り決めておく必要があります。

資産の分配によるトラブルは、事業承継がスムーズに進まない原因となります。そのため、早めの対策が必要です。

事業承継の方法とメリット・デメリット

事業承継には、さまざまな方法があり、それぞれメリット・デメリットがあります。

ここからは、主な3つの方法と、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

親族内承継

事業承継で多く選択されるのが、経営者の子どもや配偶者、子どもの配偶者、親戚などに事業承継を行う「親族内承継」という方法です。

親族への承継であれば、従業員や取引先などからの理解も得られやすく、承継期間などの調整もしやすいなどのメリットがあります。一方、親族に後継者になる意思がなかったり、複数人候補がいる場合にもめやすかったりするなどのデメリットも考えられます。

従業員への承継

親族に後継者となる人物がいなければ、社内の優秀な役員や従業員などに引き継ぐ方法もあります。すでに自社の事情に精通しており、経営方針などにも賛同してくれている人であれば、後継者として育成しやすいというメリットがあります。

しかし、経営者の親族から反対されるおそれがあったり、承継のための株式取得に資金が必要であったりする点はデメリットです。

M&A

親族や社内に後継者がいない場合、M&Aという手法があります。M&Aとは、他社に企業資産や事業を引き継ぎ、吸収合併という形で事業承継する方法です。

事業承継においてはさまざまなM&A手法が存在しますが、一般的には「株式譲渡」という手法が採用されます。ただし、身近に後継者候補がいなくても会社や事業の継続ができる点はメリットですが、買収後の経営理念や企業文化の維持が難しいケースもあります。

事業承継前にやっておきたい事前準備

事業承継に取り組むには、入念な事前準備が大切です。ここからは、事前準備しておきたい点について解説します。

会社の状況を把握する

事業承継を進めるなら、まずは自社を取り巻くさまざまな状況を項目ごとに把握しておきましょう。自社の経営状況や資産の内容などの情報は、事業承継を円滑に進めるために重要です。

事業承継後、スムーズに事業を引き継ぐためにも、後継者に正確に説明しておく必要があります。

会社の資産を把握する

事業承継では、企業価値によって相続税や贈与税が発生します。場合によっては多額の税金を支払う必要があるため、資産を把握しておかなければなりません。

課税額によっては、事業承継後に資金不足に陥り経営に影響する恐れがあるため、資金繰りを調整しておく必要があります。

後継者を選出する

事業承継で最も重要となるのが、後継者の選定です。前述の通り、後継者選びには親族内や従業員や役員などの社内の人材、外部から選択するM&Aなどの方法があります。

また、後継者には、事業を存続させるスキルや従業員や取引先から信頼を得られる力も必要です。育成が必要な場合は、育成計画も考えておきましょう。

事業承継の方法を考える

後継者候補が親族内や社内にいれば、後継者育成などに取り組みながら進められますが、いない場合は、M&Aなどによって外部の後継者に承継する方法を考える必要があります。

自社が抱える課題解決につながるように、状況に合わせて最適な承継方法を選びましょう。

事業承継計画書を作成する

事前準備や後継者候補事業承継の方法が決まったら、事業承継計画書を作成します。事業承継計画書とは、事業承継の手順や承継にたって取り組む対策などを文書としてまとめたものです。

事業承継には数年規模の時間がかかるため、計画的に進めるためにも取り組み内容をまとめておく必要があります。

【手法別】事業承継の対策方法

事業承継で取るべき対策は、手法によって異なります。以下では、代表的な3つの手法別に、対策方法について解説します。

親族内承継の場合

親族内承継では、承継後に関係者との関係を保つために、十分な後継者育成が必要です。親族とはいえ、経営スキルやノウハウの知識がなければ、従業員や取引先などの関係者との関係が壊れてしまい、事業の経営に支障をきたします。

また、相続人が複数いる場合、株や資産の分配が高になるよう配慮が必要です。円滑な事業承継のためにも、相続トラブルの防止対策は欠かせません。

親族外承継の場合

従業員や役員などの親族外に事業承継する場合、後継者が株式を取得して事業を承継するのが基本です。そのため、ある程度の資金力が必要となります。

資金が十分でない場合は、資金確保の対策が必要です。また、自社の資産や株式をあらかじめ把握しておき、課税額についても把握しておく必要があるでしょう。

M&Aを用いた事業承継の場合

M&Aで事業承継する場合、企業価値を高めるための対策が必要です。希望の条件でM&Aを成功させたいなら、買い手にとって価値がある企業だと思ってもらわなければなりません。

企業価値を高めるには、技術や商品・サービス、ノウハウなどの「強み」を強化する取り組み効果的です。また、経営強化に向けた社内の理解を深め、経営体制を見直すなどの取り組みも必要でしょう

事業承継対策を成功させるポイント

事業承継対策を成功させる最も重要なポイントは、十分な準備と計画性です。自社に合った具体的な対策内容とスケジュールを計画書として作成しておけば、効率的に進められるでしょう。

また、事業承継では法的な書類の作成や、適正な納税も必要となります。専門的な知識がないと手続きが遅れてしまうため、弁護士や行政書士などの専門家への相談や、公的機関などの相談・サポートを利用するなど、外部の力を借りるのもポイントです。

事業承継対策における支援先や相談先

事業承継に関する支援や相談サービスを利用したい場合、以下のような機関や企業を利用するといいでしょう。

事業承継・引継ぎ支援センター

中小企業庁は、事業承継などで悩む企業に向けて、相談窓口を設置しています。

全国47都道府県の各認定支援機関に設置されている「事業承継・引継ぎ支援センター」では、あらゆる事業承継に関する相談や、後継者人材バンクによる後継者選びのサポートなどを行っています。

商工会議所

全国各地にある商工会議所では、中小企業の経営者向けに多岐にわたるサポートを提供しており、事業承継に関する相談も受け付けています。

入会済みであれば、無料で受けられるサポートが多くあります。専門知識が社内に不足している場合は、利用するといいでしょう。

M&A仲介業者やM&Aコンサルティング会社

M&Aの仲介業者やM&Aコンサルティング会社は、M&Aによる事業承継の専門機関として頼りになります。

M&Aに関するノウハウや知識を豊富に有しており、事業承継に関する適切会アドバイスが期待できます。また、後継者となる他社を選ぶ際にも、M&A仲介業者やM&Aコンサルティング会社が持つ強固なネットワークが役立つでしょう。

事業承継対策を早めに始めるべき理由

事業承継対策や手続きには、手法によって半年から数年の時間がかかります。そのため、早めに取り掛からなければ、事業承継が済む前に事態が悪化してしまうかもしれません。

突然経営者が倒れたり、引退を余儀なくされたりすると、廃業せざるを得なくなります。事業を存続させるためには、手遅れになる前に対策を始め、積極的に取り組んでいくことが大切です。

まとめ

事業承継は、手続きに時間がかかるほか、当事者だけでなく多くの人に関わる取り組みであるため、トラブルを防ぐためにも事前の対策が必要です。

自社内だけで進めるのは不安という場合は、本記事で紹介した対策方法などを参考にしたうえで、専門家への相談も検討してください。

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