合同会社の事業承継におけるメリットとは?デメリットや対策方法など解説

昨今の企業の形として、合同会社が増えています。株式会社とは運用の仕組みが異なるため、事業承継や売却などを考える際に注意が必要です。スムーズに事業承継するためには、事前の対策が必要となります。

この記事では、合同会社における事業承継の対策やメリット、デメリットについて解説します。ぜひ、参考にしてください。

合同会社とは

合同会社は、会社法で新たに創設された法人形態です。会社法で定められている法人の形態としては株式会社が一般的ですが、「持分会社」という形態があります。合同会社をはじめ、合名会社や合資会社は、その持分会社に分類されます。

合同会社は、旧商法が会社法に改正された際に有限会社に代わる法人形態として生まれました。比較的小規模の会社が、コストや手間を抑えて自由に運用できるように定められた法人形態です。

合同会社と株式会社の違い

株式会社とは、会社の構成に違いがあります。合同会社では、経営者と出資者が同一の人物で構成されるが、株式会社では経営者と出資者が異なる個人または法人で構成されます。

株式会社の出資者は「株主」と呼ばれ、自由に譲渡が可能です。一方、合同会社の出資者は「社員」となるため、簡単にその権利を譲渡できません。この違いが、売却や事業譲渡にも影響を与えています。

合同会社の事業承継は可能?

合同会社は、株式会社などと同様に、売却や事業承継も可能です。ただし、株式会社よりも手続きが難しいといわれています。

売却のケースでは、株式会社の場合、過半数の株式を譲渡すれば経営権も譲渡可能ですが、合同会社の場合、持分を譲渡しても、社員全員の合意がなければ経営権を持たせることができず、第三者が経営権を握るまでの道のりが困難です

しかし、事業承継や事業譲渡の場合は、原則として社員の過半数の合意が得られれば可能となるため、売却よりは現実的です。ただし、定款で社員全員の合意が必要となっているケースもあります。

合同会社の事業承継が難しいとされている理由

事業継承や事業譲渡は売却よりも現実的な方法とはいえ、社員の半数以上の同意が必要になるため、株式会社に比べると難しいとされています。

また合同会社では、経営権を握っている社員が死亡した場合は退職扱いとなり、相続人は相続できません。もし、会社を1人で経営していた場合、そのまま消滅してしまいます。

合同会社の事業承継を考えている場合は、事前に定款に相続について明記しておいたり、社員を複数人にしておいたりなど、事前の対策が必要です。

合同会社を事業承継するメリット

合同会社では、売却ではなく事業承継すると、以下のようなメリットがあります。

1.経営強化に繋がる

事業承継では、どの事業を引き継ぐのか選択できます。そのため、現在の経営状況や戦略を考慮して自由に選択し、経営強化につなげられるというメリットがあります。

事業承継した際に発生した利益を活用して、自社の強みとなる事業を強化するなど、戦略的な経営が可能です。

2.会社を存続できる

会社のすべてを第三者に譲り渡す売却とは異なり、事業承継では、特定の事業だけを選んで承継も可能です。そのため、会社自体はなくならず、従業員の雇用も守られます。

売却や持分譲渡の場合、買い手によっては、従業員の雇用まで保証されず、買い取った後に解雇されてしまうというケースも考えられます。

一部事業の事業承継であれば、保有持分に変化はなく、社内構成も変わらないため、雇用維持が可能です。

3.後継者問題に悩まずに済む

合同会社は、パートやアルバイトなどを雇っていたとしても、出資者(社員)が1人の場合、その社員が亡くなると、その時点で解散となります。相続人がいたとしても、出資持分は相続の対象にはなりません。

また、複数の社員がいる場合、消滅は免れるものの、残った社員が家族や身内ではなく外部の人物であれば、経営権が第三者に渡ってしまいます。

しかし、事前に事業承継していれば、後継者がおらずに会社がなくなってしまう事態を防げます。後継者争いなどのトラブルも防げるでしょう。

合同会社を事業承継するデメリット

合同会社の事業承継には、デメリットもあります。把握したうえで、対策を講じておくのも必要です。

以下では、事業承継で考えられるデメリットについて解説します。

1.手続きに手間や時間がかかる

合同会社は、売却よりも事業承継や事業譲渡の方がスムーズとされていますが、引き継ぐ資産によっては手続きが複雑になり、手間や時間がかかってしまいます。

従業員や取引先との契約、不動産などの資産1つ1つの契約は、個別に手続きが必要です。事業承継にはある程度の時間と余裕をもって臨む必要があります。

2.課税や負債への対応が必要な場合も

事業承継によって発生した利益には、法人税や消費税などの税金がかかります。また、事業承継後に、負債が残ってしまった場合、返済計画も必要です。

事業承継に伴い税金対策や負債の返済計画に関しては、専門的な知識が必要とされます。

しかし、合同会社の事業承継において「対策なし」はリスクが大きい

合同会社でいつかは事業承継をしようと考えている場合、対策しておかないと大きなリスクにつながります。

特に対策すべきリスクは、以下の2つです。

1.代表者が死亡した場合

事業承継の対策を講じないままの状態で合同会社の代表者が亡くなってしまうと、企業は消滅しますが、持分に相続が発生します。相続税の支払いが求められるため、相続人となる家族に大きな負担がかかります。

出資持分には高額な税金がかかり、さらに会社の精算による借入金の返済も必要になるケースもあるため、家族に負担をかけないためにも、前もって対策が必要です。

2.節税対策をしていなかった場合

たとえ、ほとんど収益がない事業だったとしても、一般的に1億円以上の価値があると言われています。代表者が亡くなる前に事業承継をしたとしても、節税対策をしていないと、生前贈与の税金で5,000万円以上の支払いが必要です。

事業承継で発生する税金によって後継者が破産する可能性が高くなるため、早めの節税対策が必要です。

合同会社を事業承継する際の対策方法

合同会社の事業承継で生じるリスクを回避するために、事前にやっておきたい対策方法6つを紹介します。

1.定款に持分承継を記載する

代表者が突然亡くなってしまった際に、会社が清算されてしまうのを回避するためには、定款に規定を記して置く必要があります。規定には「経営者が死亡した場合、相続人が事業を引き継ぎ、社員となる」という内容の明記が必要です。

定款に明記しておけば会社の清算を回避でき、事業を存続させられるほか、従業員の雇用も守られるでしょう。

2.複数人の出資者を用意する

会社の生産がおこなわれるケースは、会社に代表者しか属していない状態で発生します。そのため、複数の出資者(社員)がいれば、出資者のなかの誰か1人が亡くなっても、会社の清算は行われません。

ただし、複数の出資者を確保する場合、経営者に不測の事態があった際の対策としては有効ですが、外部の人が経営権を握ってしまう可能性があるなど、他のリスクも発生するため、注意が必要です。

3.株式会社への変更

合同会社から株式会社に変更しておくと、親族への相続が順調に進む可能性が高まります。ただし、合同会社の特性上、株式会社に変更するのにも社員全員の同意が必要です。

また、変更するにあたって、組織変更計画書の作成や債権者保護の手続き、解散登記などの手間が発生します。手続きを完了させるまでに時間もかかるので、余裕を持って取りかかる必要があります。

4.生前贈与を行う

特定の後継者を選び、生前贈与を行っておけば、経営者が亡くなった後、持分調整でトラブルが発生するリスクを防げます。生前贈与を行っていない場合、複数人に分配される場合などで問題が起きるリスクがあります。

複数人への持分の分配は遺産分割協議が必要となり、たとえ残された社員が親族であってもトラブルに発展する可能性があり、スムーズに進みません。持分の移動にも手間がかかるため、事業承継後でも効率よく事業を引き継いでもらうためには、生前贈与は有効な対策です。

5.遺言を残しておく

生前贈与が難しい場合は、遺言を残しておくという方法もあります。持分の承継に関して遺言で明記しておけば、持分相続後の遺産分割協議によるトラブルを回避し、後継者への持分移行の手続きも簡略化可能です。

合同会社の効率的な事業承継を実現させるためには、遺言が不可欠ともいえます。

6.M&Aによって事業承継を行う

事業承継によるリスクを回避したいなら、M&Aで第三者に事業承継する方法もあります。M&Aでは、新しい代表者を迎えて後継者問題を解消できるほか、事業の成長も期待できます。

また、売り手と買い手の双方に利点があるのも特徴です。売却や事業譲渡などとは違い、業務内容や労働環境は大きく変わらないため、既存従業員の離職率の低下も見込めます。

まとめ

昨今では、小規模企業だけでなく、ある程度大きな規模の企業でも合同会社として法人化する所が増えています。株式会社と比べて運営のメリットもありますが、事業承継にはリスクが伴うため、事前対策が必要です。

また、合同会社の事業承継では、引き継ぐ資産によって手続きが複雑になります。それぞれの手続きをスムーズに済ませるためには、専門家に相談してみてもいいでしょう。

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