データで見る事業承継の課題|後継者選びのコツ・知っておきたい専門家・制度も解説

高齢になった経営者のなかには、事業承継について悩んでいる人も多いです。後継者が見つからないと廃業に至る恐れもあります。この記事では、事業承継の課題や解決策とともに、後継者の選び方について解説します。後継者に必要な要素についても具体的に解説するため、ぜひ参考にしてください。

データで見る事業承継の課題

事業承継にはさまざまな課題があります。ここでは、データを用いて事業承継の課題を解説します。

経営者の高齢化問題

東京商工リサーチは、社長の年齢に関する調査結果を公表しています。2022年における社長の年齢の分布においては、70代以上が33.3%です。また、2022年に休廃業や解散した企業の社長の年齢は、平均71.63歳という結果も出ています。

これらの結果を踏まえると、経営者の高齢化と業績悪化が関連しているとわかります。経営者が高齢である企業は、事業承継の失敗による休廃業や解散に陥りやすい状況です。

※参考:

社長の平均年齢 過去最高の63.02歳 ~ 2022年「全国社長の年齢」調査 ~|東京商工リサーチ

事業承継せず廃業する企業数

日本政策金融公庫総合研究所は、中小企業の事業承継に関する調査結果を発表しています。2023年において、中小企業で後継者が決まっている企業は10.5%となっています。一方、廃業を予定している企業は57.4%です。この調査結果によれば、中小企業の約6割は後継者を見つけられず廃業せざるを得なくなっています。

※参考:

中小企業のうち後継者が決定している企業は10.5%、廃業を予定している企業は57.4%~「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)」結果から~|日本政策金融公庫

事業継承せず廃業する理由

日本政策金融公庫総合研究所の調査結果においては、廃業の理由についても明かされています。それによると、後継者がいないことが廃業の原因になっている企業は全体の28.4%でした。子ども自身に後継者となる意思がないケースだけでなく、そもそも子どもがいないケースもあります。また、事業承継を積極的に検討していない企業も多くなっています。

※参考:

中小企業のうち後継者が決定している企業は10.5%、廃業を予定している企業は57.4%~「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)」結果から~|日本政策金融公庫

事業承継における候補者の選び方とメリット・デメリット

事業承継の候補者の選び方は複数あります。ここでは、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

1.親族から選ぶとき

事業承継の候補者を親族から選ぶパターンはよくあります。親族が後継者になる場合、周囲からも賛同を得やすいです。また、長期間かけて後継者になるための指導ができます。ただし、実際には後継者になる意思を示す人が親族にいるとは限りません。また、複数の親族が後継者になりたいと主張し、揉めるケースもあります。

2.従業員から選ぶとき

事業承継の候補者は、従業員から選ぶケースもあります。自社の事業についてよく知っている従業員を後継者にすれば、事業承継後の運営もスムーズにいく可能性が高いです。ただし、候補者がまとまった資金を用意できないと、そもそも株式を取得できず事業承継も困難になる恐れもあります。また、後継者選びに関して社内に争いが起きるリスクもあります。

3.第三者承継を選ぶとき

第三者承継とは、主にM&Aで事業を引き継ぐ方法です。第三者承継なら後継者を育成する手間がかかりません。また、株式を売却するため、経営者は利益を得られます。ただし、経営者の希望通りに事業を譲渡できるとは限らない点に注意が必要です。従業員の理解を得られず反発される恐れもあります。

事業承継の6つの課題と解決策

ここでは、事業承継の課題と解決策について、くわしく解説します。

1.能力や資質の備わった後継者を確保できない

後継者探しにおいては、ふさわしい資質や能力を備える人材が見つからない場合も多いです。また、経営者やその周囲に事業承継に関する知識がなく、後継者探しが難航するケースもあります。

そのような状況で事業承継の成功を目指すには、専用のサービスの活用がおすすめです。サービスを利用して第三者承継を検討すると、スムーズに事業を引き継げる可能性が高くなります。詳細は後述するため、合わせて参考にしてください。

2.経営権(株式)が分散している

複数の人が株式を所有していて経営権が分散している場合、後継者は安定的な経営がしにくくなります。そのため、後継者として事業を引き受けてくれる人が見つかりにくい状況になります。

株式が分散している場合、経営者が事前に株式を買い集めておくことが大切です。後継者にまとまった株式を付与できる状況であれば、スムーズな事業承継を実現しやすくなります。

3.後継者が資金不足で株式を買えない

後継者として事業を引き継ぐには、株式を買い取る必要があります。企業の評価額が高いほど必要な資金も高額になります。場合によっては候補者の資金が不足し、必要な株式を買えないパターンもあるでしょう。後継者が株式を獲得するには、資金調達の方法を検討すべきです。補助金や融資などを活用すると、必要な資金を確保できる可能性があります。

4.贈与税・相続税の負担が大きい

相続や贈与により株式の権利を受け渡した場合、後継者は贈与税や相続税を納めなければなりません。後継者にとって大きな負担となるため、事業承継の実現を妨げる要因になっています。税の負担を抑えるには、事業承継税制を利用する方法があります。専門家のサポートを受けながら対応するとスムーズです。

5.個人保証の引き継ぎに課題がある

中小企業の事業承継においては、個人保証の引き継ぎに関する課題があります。個人保証とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際に経営者が連帯保証人になることです。経営者が個人保証を行っていれば、事業承継によって後継者にも個人保証が引き継がれます。

ただし、後継者については、経営者保証ガイドラインにより個人保証の解除が可能です。詳細については後述します。

6.従業員や企業の将来が懸念される

特に第三者承継においては、事業承継後に企業そのものや従業員がどうなるかに不安に感じやすいです。事業承継後の未来に対する不安を解消するには、適切な契約を交わす必要があります。契約内容が納得いくものであるか、契約締結前によく確認しましょう。

3種類の事業承継方法

事業承継の方法は主に3種類あります。それぞれの方法についてくわしく解説します。

1.買収よる事業承継

買収による事業承継は、もとの経営者が保有している株式を後継者が買い取る方法です。経営者は多くの株式を保有しているため、後継者はまとまった資金を用意する必要があります。後継者の資金の状況によっては、株式の売買を少しずつ行う場合もあります。

2.相続による事業承継

相続による事業承継は、もとの経営者が死亡した後に後継者が株式を相続する方法です。主に親族から後継者を選んで事業承継するケースで利用されています。ただし、後継者には相続税を負担する義務が発生するため、負担が大きいです。すでに触れたとおり、事業承継税制の活用も検討しましょう。

3.生前贈与による事業承継

生前贈与による事業承継は、もとの経営者が生きている間に株式を後継者へ贈与する方法です。相続による事業承継と同じく、親族内での事業承継によく利用されています。後継者は株式を贈与によって取得するため、贈与税が発生します。

事業承継する後継者に必要な要素

事業承継する後継者としては、どのような人物がふさわしいのでしょうか。ここでは、後継者に必要な要素を解説します。

従業員を理解している

事業承継後もスムーズな組織の運営を維持するには、後継者が従業員についてよく理解している必要があります。従業員への理解がある後継者ならコミュニケーションも取りやすく、リーダーシップを発揮できます。

企業を熟知している

後継者は企業について熟知していることも大切です。実務に関する知識や経験はもちろん、その企業の経営理念、制度、製品の特徴などについて幅広く理解していなければなりません。

事業承継の課題解決に役立つサービス・補助金

事業承継の課題を解決するためには、各種サービスや補助金にも注目しましょう。以下でくわしく解説します。

事業承継に詳しい各種専門家

事業承継について課題を抱えている場合、各種専門家への相談がおすすめです。M&Aや事業承継の専門家としては、以下の士業や企業があげられます。

・中小企業診断士

・事業承継士

・M&A仲介会社

それぞれ対応できる相談内容や得意分野が異なるため、課題に合わせて頼れる専門家に連絡を取りましょう。

公的相談窓口の事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継については、公的な相談窓口も存在します。事業承継・引継ぎ支援センターは、後継者がいないことについて悩んでいる経営者へアドバイスを行っています。また、事業承継に興味をもっている第三者とのマッチングも可能です。

M&Aなどの費用工面に役立つ事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金は、企業の後継者となった人の新しい挑戦をサポートするための補助金です。例えば、M&A専門家を活用するための費用、経営革新に必要な設備費、人件費などが補助の対象となります。後継者の事業承継を後押しする補助金であるため、詳細を確認しておくとよいでしょう。

事業承継の課題解決に向けて知っておきたい知識

事業承継の課題を解決するために押さえておきたい知識がさまざまあります。以下で詳細を解説します。

事業承継を後押しする経営承継円滑化法

経営承継円滑化法は、事業承継を進めるうえで利用できる優遇措置を定めています。例えば、事業承継税制や金融支援などについて示されています。事業承継を進めるうえで役立つ内容がまとめられているため、把握しておきましょう。

経営者保証による弊害を除去するガイドライン

経営者保証ガイドラインは、経営者が契約した個人保証から後継者を守るためのルールをまとめたものです。もとの経営者が個人保証を行っていても、後継者はその義務を引き継がなくて済むよう配慮されています。経営者保証ガイドラインに基づいて対応すれば、後継者が決まりやすくなります。

まとめ

事業承継ができず廃業する企業は多くあり、事業承継を実現するにはさまざまな課題があります。しかし、それぞれの課題については解決策もあるため、状況に合わせて最適な方法を検討することが大切です。

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