事業承継問題とは?考えられる原因やリスク、解決策まで徹底解説

中小企業の経営者が高齢化している昨今では、多くの企業がさまざまな事業承継の課題に直面しています。高齢化による廃業を回避するためには、自社の状況とリスクを理解し、適切な解決策を模索することが不可欠です。

本記事では、事業承継問題で考えられる原因や解決策などを詳しく解説します。ぜひ、参考にしてください。

事業承継とは

後継者が不足している企業にとって、事業を存続させるためには「事業承継」の実施が欠かせません。事業承継(じぎょうしょうけい)とは、企業や事業を経営している個人や家族から、次世代の経営者や所有者に、事業のノウハウや資産などを引き継ぐ取り組みです。

事業承継は、多額のお金やさまざまな人が関わる取り組みとなるため、しっかりと準備や対策をしていなければ、トラブルが発生してしまう可能性があります。

事業承継が必要な理由

事業承継は、経営者が引退したり、突然亡くなったりした場合でも、企業が継続的に存続し、発展していくための対策として有効な取り組みです。後継者問題を抱える企業が増える中、事業や従業員を守るためにも、経営者が健在のうちに取り組みを始める企業が増えています。

また、事業承継には相続問題や税金問題のリスクもあるため、円満に進めるには事前準備が大切です。

事業承継問題とは

事業承継に伴い発生する課題やリスクを「事業承継問題」と言い、多くの企業で対策が必要とされています。事業承継を円滑に進めるには、さまざまな課題やリスクを想定した対策の準備も必要です。

中小企業が経済の大半を担っている日本では、近年、経営者の高齢化が問題となっており、事業承継を進めるのも困難なケースが発生しています。そのため、自社が抱える事業承継問題を早めに把握し、事業承継を進めるための環境整備が必要とされています。

事業承継問題が起こる原因

事業承継問題と呼ばれるものには、さまざまな課題やリスクがあるため、それぞれに適した対策を打つには、原因の把握が重要です。

ここからは、事業承継問題の原因について詳しく解説します。

後継者がいない

事業承継で最も多い問題が、後継者の不在です。前述の通り、多くの企業では経営者や従業員の高齢化が進み、後継者となる人材が不足しています。

適切な後継者が身内や社内に見当たらない場合は、外部から適任者を引き入れなければなりません。しかし、適任者の見極めが困難であったり、なかなか見つからなかったりするため、事業承継の円滑な進行は難しいのが現状です。

後継者の育成不足

後継者となる人材がいる企業でも、育成不足によって事業承継が上手く進められないというケースがあります。事業承継を円滑に進め、さらに経営上の課題を回避するためには、後継者には多岐にわたる知識とスキルを伝授しておかなければなりません。

そのため、後継者の育成には相応の時間がかかり、その育成が追い付いておらず、事業承継が進められないという事例がよくあります。

ワンマン経営による意思決定の遅れ

ワンマン経営の企業の場合、事業承継の進展が遅れやすくなります。経営者が事業承継に対して関心を抱かければ、事業承継の進展が見込めません。

またワンマン経営場合、自主性の低い従業員が増えてしまい、万が一経営者に何かあった際に判断ができないという事態になる可能性があります。

事業承継の手続きには、数年の時間がかかります。そのため、企業としての意思決定が遅れると、うまく進展させられません。

事業承継に詳しい相談者がいない

事業承継は、企業の存続にかかわる重要な取り組みであるため、専門家やコンサルタントに相談する経営者も多くいます。ただ、企業の拠点によっては、適切なアドバイザーが近くにいるとは限りません。

適切な相談相手が見つからないために、残念ながら廃業を余儀なくされたり、事業承継がうまく進まなかったりする可能性があります。

経営状況や将来への不安

経営に関する問題が発生していたり、将来に不透明感を抱えていたりする企業の場合、後継者が承継を辞退する可能性も考えられます。たとえ後継者がいたとしても、後継者が受け入れてくれなければ、事業承継は進められません。

後継者は、事業やプラス資産だけでなく、負債などのマイナスの資産も承継します。そのため、承継によるリスクが高いと後継者にとっても大きなリスクとなるため、諦めざるを得ない状況になるでしょう。

事業承継問題を解決できなかった場合はどうなる?

事業承継が実現しなければ、企業は廃業に進んでしまいます。廃業には、多額の廃業費用の支払いや従業員への退職金などという、大きな金銭的リスクがあるので注意が必要です。

手元の資金が不足していた場合、個人の財産を売却したり、廃業後も債務返済が継続したりする可能性があります。これまでに築き上げたノウハウや技術、商品・サービスもなくなってしまうため、経営者とその家族だけでなく、顧客や地域経済にも影響が出るでしょう。

従業員とその家族が路頭に迷うことも

企業が廃業してしまうと、従業員は解雇されてしまいます。他の企業で雇ってもらえたとしても、条件で働けると限りません。

新しい職を見つけるまでに時間がかかれば、従業員やその家族が路頭に迷う可能性もあります。退職金だけでは従業員を守ることはできません。そのため、事業承継による事業の存続は、事業や資産だけでなく、従業員を守るためにも必要とされています。

事業承継問題の5つの解決方法

前項で解説した事業承継問題の解決には、以下の5つの解決方法が効果的です。

以下でそれぞれの解決方法について詳しく解説します。

1.複数の選択肢を検討する

事業承継にはいくつかの手法が存在するため、自社院はどの承継方法が適しているのか検討しておく必要があります。 以下の表にまとめたので、参考にしてください。

事業承継の手法 内容
親族内承継 経営者の親族に、相続・贈与して事業や資産を承継する手法
親族外承継 親族以外の管理職や従業員に、株式の買取によって承継する手法
M&A 企業や事業を他社に売却する手法
株式上場 株式を上場させ、株式を分散させ、資本と経営を分けておく手法

 

事業承継では、親族内承継が一般的ですが、他の方法も検討すると、事業承継問題の解決が期待できます。親族に後継者がいなくても、親族外承継やM&Aなどの手法であれば事業承継が可能です。

2.早い段階で準備を始める

事業承継は、準備から手続きまで含めると、それなりに時間がかかります。後継者がすでに決まっている場合は5~10年、M&Aならさらに短くなりますが、少なくとも約半年以上の期間は必要です。

そのため、気づいたときには時間的な余裕がないという事態にならないためにも、できるだけ早い段階から、十分な準備をしておくことが賢明です。

3.従業員や相続人への配慮を意識する

事業承継により事業や企業の資産が後継者に引き継がれると、当然従業員にも影響があります。そのため、後継者選びの際には、従業員への配慮も必要です。また、経営者の相続人と後継者が異なる場合には、遺留分も考慮しながら事業承継を進める必要があります。

思わぬトラブルを防ぐためにも、従業員や相続人も納得できる形で事業承継を進めましょう。

4.後継者の育成計画を立てておく

事業承継後に、スムーズに事業を進めていくためにも、後継者の育成は重要です。後継者の候補を選定したら、その人物には自社の経営方針やノウハウを習得させる必要があります。効率的に育成を進めるには、育成計画を立てておくとスムーズです。

事業承継の期日を定め、段階的な目標を立てながら経営者として十分な実力がつけられるように、計画を立てましょう。

5.経営状況・財務状態を明確にしておく

経営状況や財務状態の明確化は、事業承継において不可欠な要素です。後継者に安心して事業を引き継いでもらうためにも、財務諸表や資金繰り表などを活用し、企業の現状を説明できる状態にしておきましょう。

また、財務諸表の作成は、金融機関との信頼関係を築くのにも役立ちます。

事業承継のサポート制度も選択肢に入れよう

事業承継は、後継者選びだけでなく、事業引継ぎや税制関連の手続きも必要となるため、以下のようなサポート活用することがおすすめです。

事業承継税制

事業承継税制とは、事業承継をする際に発生する相続税や贈与税に関して、一定期間の納税猶予を得ることができる制度で利用要件を満たしていれば活用できます。

2018年に新たな特例措置が導入され、要件が緩和されました。また、納税猶予される割合も引き上げられたので、事業承継が企業に与える影響を軽減するためにも、活用したい制度です。

公的相談窓口

事業承継について、疑問点などがあれば、国や自治体が用意している相談窓口が利用できます。コンサルタントや弁護士などの専門家が周りにおらず、どうすればいいのか分からない場合などは、まずは公的機関が運営している相談窓口を利用するといいでしょう。

代表的な相談窓口として、中小企業庁の「事業引継ぎ相談窓口」と「事業引継ぎ支援センター」などがあります。

事業承継問題を相談できる機関

事業承継問題の相談は、中小企業庁などの公的機関以外でも受け付けています。ここからは、おすすめの相談先をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

商工会議所

地域にある商工会議所も相談先として頼りになります。商工会議所では、中小企業が抱える悩みをさまざまな形でサポートしており、後継者不足に関する悩みも例外ではありません。

どのようなサポートを行っているか、地域の商工会議所に問い合わせしてみるといいでしょう。

弁護士や行政書士などの専門家

弁護士や行政書士も、事業承継の相談先として最適です。事業承継にはさまざまな法的な手続きが必要となるため、弁護士のアドバイスや行政書士の文書作成サポートが役立ちます。

また、専門家からの意見を取り入れれば、余計なトラブルも防止できます。

M&Aコンサルティング会社や仲介会社

後継者がおらず、M&Aによる事業承継を考えているなら、M&Aコンサルティング会社や仲介会社に相談するといいでしょう。M&A支援を専門としている企業であれば、これまでの経験やノウハウを活かして、適切にアドバイスしてもらえる可能性が高いでしょう

また、強固なネットワークを有しているため、自社に適した売却先を見つけやすくなります。

まとめ

事業承継は、さまざまな準備や手続きが必要になるほか、後継者の育成などにも時間を要するため、早めに取り掛かる必要があります。また、スムーズに進めるためには、専門家の意見を取り入れるのもポイントです。

自社内だけでは不安という場合は、本記事で紹介した公的機関やサポートを実施している企業などを参考に、相談先を見つけてください。

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