事業承継とM&Aにはどんな違いがある?それぞれの特徴やスムーズな承継のポイントを解説

不動産経営をするなかで、事業承継について悩んでいる方は多いでしょう。不動産の事業承継には、親族や従業員への承継のほか、M&Aという選択肢もあります。この記事では一般的な事業承継とM&Aの違いに戸惑いを感じる人へ向けて、事業承継とM&Aの違いやメリットデメリット、事業承継のポイントを解説するので、ぜひ参考にしてください。

事業を引き継ぐ事業承継とは

事業承継とは、経営者が事業を後継者に譲り、引き継ぐことです。事業承継自体は、大企業でも中小企業でも行われます。大企業の場合、株主が社長や代表取締役に経営を委任しているため、社長が退陣しても株主によってスムーズに後継が決められます。しかし、非上場企業では社長が退陣する際に、社長自らの手による後継の選択や贈与や相続の手続きが必要です。

事業承継によって、現金や不動産はもちろん、ノウハウなどの目に見えない財産も引き継ぐことができます。これまでは、身内に引き継ぐ「親族内承継」や従業員に引き継ぐ「親族外承継」が主流でした。

事業承継でよく耳にするM&Aとは?

M&Aは「親族内承継」や「親族外承継」と同じく事業承継の方法の1つです。買収や合併を意味する「Mergers and Acquisitions」の略称で、事業承継のノウハウとしても活用されています。売り手企業の後継者問題が解決でき、買い手企業は事業の拡大に活用できるのがM&Aのメリットです。

M&Aの種類

M&Aには、以下にあげる4つの手法があります。

・株式譲渡…既存の株主が買収者へ株を譲渡する方法

・事業譲渡…既存の会社が買収者へ事業を譲渡し、譲渡代金を受け取る方法

・会社分割…既存の会社が吸収会社へ事業を譲渡し、代金として吸収会社の株を受け取る方法

・合併…既存の会社を消滅させ、吸収会社もしくは新会社に事業を承継させる方法

一般的な事業承継とM&Aの違いは

一般的な事業承継方法の「親族内承継」や「親族外承継」とM&Aの違いは、現在の経営者の引退が伴うかどうかです。一般的な事業承継では、現在の経営者は引き継ぎ後に引退することが前提となります。一方M&Aでは、引退するケースと引き続き経営に関わるケース、どちらになるかはケースバイケースです。

さらに、M&Aは基本的に事業拡大が目的であるため、事業会社やファンドなどが承継の相手となります。

事業承継のM&A以外の方法

事業承継には、M&A以外にもいくつかの手法があります。

IPO(Initial Public Offering)

IPOは株式公開を意味します。自社株に換金性・流動性を持たせる手法で、日本語では「新規公開株」あるいは「新規上場株式」などと呼ばれるものです。IPOを行うにはある程度の企業規模が必要なため、難易度は高いでしょう。また、買い手がつくまでに時間と費用も掛かります。しかし、承継後も事業拡大を目指しているなら効果的な手法の1つです。

事業の清算

引継ぎ先がどうしても見つからなければ、廃業も選択肢の1つです。とりわけ赤字経営の場合、早期の判断によって損失を最小限に抑えられます。ただし、築いてきた取引先との関係がリセットされ、従業員も職を失うことになるため、判断は慎重に行わなければなりません。また、事業清算の手続きは煩雑で、専門家の助力を必要とするケースも多くなります。

事業承継でM&Aが注目される背景

事業承継という分野において、なぜM&Aが注目されているのでしょうか。具体的な背景を解説します。

あらゆる事業で後継者が不足している

現在、さまざまな要因から、後継者不足に悩む事業主が増加しています。いずれも、事業を引き継げる能力を持った後継者を見つけられない事例ばかりです。少子化や、方向性の違いのため、家族のなかに後継者がいないという事業主はよくみられます。親族や第三者でも、引き継いでくれる意志を持った人が見つからず困っている企業も多いでしょう。

親族経営が減少している

少子高齢化が進み、親族経営で事業を営む企業は減っています。そもそも会社のなかに後継者がいなかった場合、子どもがいても親の引退に合わせて事業を承継するのは簡単ではありません。昨今の事業継承は、さまざまな事情から第三者を相手にするケースが増えているため、M&Aの事例も増加しています。

M&Aの認知

以前は「M&Aは大手企業がするもの」という認識が一般的でしたが、中小企業でもM&Aの手法を活かせることが認知されるようになりました。また、M&Aは買収・強引な手法というイメージがあったものの、実際には従業員の雇用確保や事業の拡大なども目指せるなど、正しい情報が広く認知されています。

事業承継M&Aの現状は?

事業承継M&Aの現状について、実施件数やイメージの点から確認してみましょう。

日本における事業承継M&A件数の推移

日本では、少子高齢化に伴い、親族や第三者の後継者を自力で見つけるのが困難になっているため、M&Aの件数は増加傾向にあります。現在では、親族外承継の割合は事業承継全体の半分以上を占め、M&Aなど買収による事業承継は全体の20%以上です。中小企業のM&A成功事例も増え、M&Aによる事業承継を選択する企業が増えているといえます。

日本における事業承継M&Aのイメージ

日本では、買収・合併と聞くとネガティブ要素が強く、マイナスイメージを抱く人も多いのが現状です。しかし、事業の成長が見込める点などのメリットが徐々に認知されるようになり、廃業よりも良いとしてM&Aを選ぶケースも増えています。M&Aの成功事例が広まれば、後継者問題の解決策としてさらに注目される可能性が高まるでしょう。

事業承継M&Aで期待できるメリット

事業承継M&Aでは、後継者を広い範囲から選ぶことができます。創業者は自社株式を現金化して老後資金に充てられるうえ、相続も現金で行うためスムーズです。また、買い手が事業を成長・拡大させすることで企業価値が残るメリットもあります。とりわけ意識したいのは以下の2点です。

新たに収入を増やせる可能性がある

事業承継M&Aで自社株式を売却することで、売却益として収益を得られます。この収益は老後の生活資金に充てられるほか、新たにビジネスを始めることで収入を増やせる可能性にもつながります。

自社の価値を維持できる

事業承継M&Aは譲渡する相手先を選べるため、競争力のある企業を選ぶことで自社の価値を維持することができます。事業の価値を未来に残したい人ほど、M&Aのメリットは大きいといえるでしょう。

事業承継M&Aで気をつけるべきデメリット

事業承継M&Aでは、買い手企業の選定や買収交渉などに時間を要します。仲介サービスを利用すると依頼コストが発生する点もデメリットです。また、経営理念を引き継いでもらえなかったり、従業員が離れてしまったりする可能性がある点に注意が必要です。

関係者が反発するリスクがある

M&Aによって経営層が変わることで、社風が一変する可能性があります。新しい経営スタイルに対して従業員や取引先などが反発し、退職や取引停止などの問題が生じることも想定されます。譲受企業の社風を変えることはできないので、相手先の選定が重要です。

選定や交渉に時間がかかりやすい

M&Aでは、買い手が見つからない、条件が合わないといった理由で、契約までに時間を要します。また、売却後は引き継ぎのために、譲渡側の経営者が譲受企業に一定期間残るケースもあります。

事業承継のM&Aに適性があるかチェックするポイント

事業承継M&Aに適性があるかどうかは、以下のような項目で判断できます。

項目 事業承継M&Aに向いた企業の特徴
自社の売上高 年間の売上高が多い。目安は5億円以上
営業利益 買収先の企業に利益をもたらすよう、営業利益が上がっている
従業員数 多いほうが、経営が健全だと判断される
組織体制 従業員の判断力が機能している
ブランドや技術力 ブランド力や技術力がある
取引先との関係 取引先と良い関係が築けている

事業承継M&Aを進める手順

事業承継M&Aは以下のように進めていきます。

・企業価値の明確化…自社にどのような価値があるかを洗い出す

・M&Aの方法を選択…複数ある手法のなかから最適なものを選択する

・専門業者に相談…法的な手順をクリアするため専門家に相談する

・相手先の決定・トップ面談…専門家が間に入り相手先を決める

・基本合意書の締結…事業の譲渡価格、譲渡日、スケジュールについて合意する

・買い手のデューデリジェンス…買い手によって企業価値の最終調査が行われる

・最終合意契約書の締結…企業価値に問題がなければ最終合意を行う

・経営統合(PMI)を実施…契約に基づき、経営統合を行うことで事業承継が完了する

事業承継M&Aを成功させるためのポイント

事業承継M&Aを行うにあたり、押さえておきたいポイントは以下のとおりです。

ブランド力や技術力の強化

事業承継にあたり、企業価値を向上させれば買い手も付きやすくなります。自社の魅力や強みを整理し、スムーズな取引を目指すのがおすすめです。

早いタイミングでの判断

M&Aは、長期化すると5~10年かかるケースもあります。早めに方針を固め、準備を始める必要があるでしょう。準備が遅れた結果、経営が続けられなくなり、やむを得ず廃業になってしまうケースもあります。

株主の理解の獲得

M&Aは、株主の理解が得られないと不成立になってしまう可能性があります。準備が不十分なままで従業員に伝わって情報が漏れないように、M&Aについての説明は株主と経営層のみで行いましょう。

自治体の支援を活用

事業承継・引継ぎ補助金や事業承継税制など、自治体では事業承継で利用できる支援策を用意しています。事業承継ガイドラインや中小M&Aハンドブックなども策定されているので、活用してください。

事業承継M&Aはパートナー探しが大事

事業継承でのM&Aに悩む人のなかには、高齢の経営者も多く含まれます。M&Aに関する知識がなく、自社の将来を不安に感じている人もいるでしょう。

この場合、国が全国に設置する事業引継ぎ支援センターを利用できるほか、M&A仲介を専門的に行っている企業もあります。補助金などを利用するには専門的知識が必要になるため、専門機関を利用したほうがスムーズです。M&Aを行う際の仲介業者選びは、実績や経験が豊富な企業のなかから、担当者の人柄などを実際に見て判断すると良いでしょう。

まとめ

従来、親族間で行うことの多かった事業承継も、昨今ではM&Aを利用することが増えています。M&Aは事業の売却によって利益を得られるうえ、取引先や従業員との関係も守ることができます。

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