事業承継の融資とは?融資の種類や注意点、利用の流れなど徹底解説

近々事業承継する予定がある人や事業承継に興味がある人の多くは、資金面に不安を抱えているのではないでしょうか。事業を引き継ぐまでさまざまな準備がありますが、特に事業の後継者は多額の資金を用立てる必要があります。

本記事では、事業承継で利用できる可能性のある融資や、融資を受ける際のメリットや注意点、利用の流れなどを解説します。ぜひ、参考にしてください。

「事業承継」とは

事業承継(じぎょうしょうけい)とは、ある企業や事業の経営を、現経営者から後継者に引き継ぐことです。引退・死亡あるいは他の理由で経営者が経営を退く際には、一般的に事業承継が行われます。

家族経営の中小企業から大規模な企業まで、企業規模を問わず事業承継は避けられない問題です。例えば、突然経営者がいなくなったときに後継者が決まっていなければ、事業を存続できなくなり、従業員・取引先に影響が及び、後継者争いに発展する恐れもあります。

事業承継において融資制度を受ける目的とは

事業承継では後継者に資金力が求められます。そのため、資金調達方法として融資制度を検討しましょう。事業承継で融資制度を受ける目的を解説します。

事業資産を買い取る場合

後継者以外の相続人に事業資産が受け継がれた場合は、お金を払って資産を買い取る必要があります。経営者が突然死亡したとき、遺言書があれば、後継者に円滑に事業資産が引き継がれるでしょう。一方、遺言書がなければ、事業に関係ない相続人が事業資産を手にする可能性があります。

他の相続人の好きなように事業資産が使われてしまうと、事業への影響は避けられません。そのため、後継者は相応の資金を用意して事業用資産を買い取る必要があります。

相続税などの納税資金として

事業承継に関する税金を支払うときに融資を活用する後継者もいます。例えば、経営者の死亡により財産を相続した後継者には、相続財産の額に応じて相続税の支払い義務が発生します。

相続税は通常、相続から10か月以内での納付が必要です。納付は現金一括納付で、期限に遅れるとペナルティが課されます。しかし、相続対象が土地や建物などの不動産、貴金属類など実物資産の場合は、換金に時間がかかるかもしれません。早急に納税資金を工面するためには、融資が役立ちます。

事業用資産などの取得が必要な場合

事業用資産が経営者から企業に貸し付けられている場合、後継者には対象資産の取得が求められます。もしそのままにして経営者が死亡した場合、本社や工場が相続の対象となり、前述のように相続時にトラブルに発展する恐れがあるためです。

しかし、前もって事業資産を取得するためには、後継者に十分な資金が必要です。工面できない分は融資を受け、対応しましょう。

事業承継において融資を受けるメリット

金融機関から融資を受けると、資金を得られる以上のメリットが見込めます。以下では、事業承継において融資を受けるメリットを解説します。

事業承継に関するアドバイスを受けられる

融資を受ける際、金融機関の担当者から、事業承継に関するアドバイスを提供してもらえる可能性があります。銀行や信用金庫は融資の判断を下すにあたり、企業の経営状況を多角的かつ客観的に分析します。特に、付き合いが長く関係性が築かれている金融機関なら、親身になって対応してくれるでしょう。

後継者が資金を準備するまで待たずに済む

一般的に事業承継の際は、後継者が多額の資金を用意する必要があります。しかし、ほとんどの後継者には経営者の経験がなく、資金調達に長けているわけでもありません。急遽資金を用意してもらうには無理があるため、融資を受けた方がスムーズに事業承継できます。

事業承継と同時に新たな事業展開ができる

事業承継に使われるローンのことを「事業承継ローン」と呼びます。事業承継時は、企業の価値を高めようと、後継者の視点から事業の見直しが行われる場合が少なくありません。事業承継ローンは設備投資や新規事業開拓に活用できるため、後継者や企業に資金がなくても新たな事業を展開しやすくなります。

事業承継における融資の種類

事業承継を目的とした融資は、一般的なビジネスローンよりも受けやすいのが特徴です。以下では、事業承継における融資の申込先を紹介します。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は100%国が出資する金融機関で、経済成長や地域振興を目的に融資を実行します。

中小企業の事業承継では、日本政策金融公庫の融資がおすすめです。日本政策金融公庫の融資は、通常の民間金融機関と比べると、中小企業にとって有利な条件が設定されています。また、「国が出資する機関」からの融資実績があれば、企業の信用度が高まります。

民間金融機関

メガバンクや地方銀行、信用金庫などの民間金融機関も事業承継ローンを提供しています。金利や返済期間は各金融機関により異なりますが、保証人・担保不要など、事業承継ローンは通常の融資よりも審査が容易な傾向にあります。

信用保証協会の特別保証

信用保証協会とは、中小企業などの資金調達を促進するために設立された公的機関です。一般的に企業が融資を受ける際は、経営者や親族が「個人保証」を負い、連帯保証人になります。ただし、信用保証協会が提供する「事業承継特別保証制度」を利用すると、経営者は個人保証なしで金融機関から融資を受けられます。

事業承継において融資を利用する流れ

日本政策金融公庫から融資を受ける際の流れを解説します。ただし、融資を受ける際はいきなり申請しようとせず、まずは専門家や支店窓口に相談しましょう。

1.専門家への相談

事業承継を検討する際は、まず税理士などの専門家に相談することが重要です。事業承継に伴い、相続税や贈与税などの発生が予測され、手続きの内容やタイミングで納付する税金の種類は変わります。税額を事前に概算し、「事業承継税制」などを活用して節税するためには、専門家のアドバイスが役立ちます。

2.事業承継計画の策定

経営者と後継者が対話しつつ、事業承継計画書を完成させましょう。事業承継計画書には、手順やスケジュールに加え、発生する税金に関する対策などさまざまな課題を記載します。

事業承継計画書の重要度は高く、経営者の親族や金融機関・取引先などとの情報共有や、融資の審査を受ける際の説明に役立ちます。

3.窓口での相談

事業承継計画書や決算書、会社概要が分かるパンフレットなどを持って、日本政策金融公庫の支店窓口へ行きましょう。急いで申請しても、審査に通らない恐れがあります。事業承継ローンの申し込みに必要な書類や、審査に通るためのポイントを確認してください。

なお、支店では融資の可否は判断されませんが、返済プランの立て方など、事業承継に関する金融機関としてのアドバイスを受けられます。

4.事業承継ローンの申し込み

支店の窓口での相談内容を考慮したうえで、日本政策金融公庫各支店の中小企業事業の窓口にて、事業承継ローンを申し込みます。窓口での相談内容に基づいて、現実的な融資金額や返済期間となるよう調整しましょう。

審査にあたり、後継者が面談を受ける場合もあります。そのため、事業や返済計画に対して矛盾なく説明できるための準備も必要です。

5.貸付契約を締結する

融資の審査が通れば契約が成立し、具体的な契約内容を確認した後、融資金額が振り込まれます。日本政策金融公庫から受けられる融資限度額は、7億2,000万円です。また、返済期間は、設備投資の場合は20年以内、運転資金の場合は7年以内です。

事業承継において融資を受ける際の注意点

事業承継ローンには金利がかかるため、計画的な利用が望まれます。事業承継で融資を受ける際の注意点を解説します。

融資を受けるには費用がかかる

融資で資金を得ると、利息を含めた金額を返済する義務が課せられます。結果として支出が増加するため、後継者の自己資金で事業承継できるなら融資は不要でしょう。「お金があるに超したことはない」と融資を受けても、後の返済が困難になる恐れがあります。自己資金の状況を踏まえて、融資の必要性をよく検討してください。

必ずしも融資が受けられるわけではない

金融機関の審査の結果、融資が認められない可能性も考えられます。審査に通らない原因には、業績不振、事業承継計画書の不備などがあります。

融資を受けられない場合は、他の資金調達法で事業承継を進めるか、事業承継を中断するかを検討しなくてはなりません。また、期間をあけて融資の再審査を申し込むという手もあります。

実際に融資を受けるまでに時間がかかる

審査結果が即座に出るわけではなく、融資の実行までには数週間から数か月程度時間がかかります。前述のように、税金には納付期限があります。必要なタイミングに間に合うように、融資を受ける予定があれば早めに申請しましょう。

まとめ

事業承継を進めるには、多額の資金が必要です。後継者の自己資金で工面できない分は、日本政策金融公庫や民間金融機関の融資でまかないましょう。ただし、事業承継にかかわる融資も、一般的な融資と同じく金利が発生します。必要性の判断を含め、慎重に融資を活用しましょう。

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