
開業届とは、個人事業主として開業するために税務署へ提出する書類です。開業届を出さなくても罰則の対象にはなりません。しかし、所得税法上では、開業届について開業から1か月以内の提出が求められています。この記事では、開業届の詳細とともに、開業届の提出方法やともに提出する書類などについて解説します。ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
開業届とは
開業届とは、個人事業主として開業する場合に管轄の税務署に対して提出する書類です。正式名称は個人事業の開業・廃業等届出書です。
開業届の書類は税務署で受け取れます。フォーマットは国税庁のホームページからもダウンロードが可能です。所得税法では、事業を始めてから1か月以内に開業届を提出することが義務付けられています。期限が土日祝日の場合、その翌日まで期限を延長できます。ただし、開業届を提出せずに事業を継続しても罰則はありません。
※参考:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
開業届以外の開業時の必要書類
開業時は、開業届以外に個人事業開始申告書や本人確認書類、マイナンバーが確認できる書類も提出する必要があります。
個人事業開始申告書
個人事業開始申告書は、各都道府県の税事務所に対して事業の開始を申告する書類です。提出先が各都道府県となっている理由は、個人事業税は都道府県税であるためです。ただし、所得税の確定申告をしている場合、個人事業税の申告を別途する必要はありません。なお、仮に個人事業開始申告書を提出しなくても罰則はありません。
本人確認書類
開業届を提出する際は、なりすましを防ぐための本人確認を行います。本人確認のために必要な書類の具体例を挙げると、運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどです。なお、開業届は郵送でも提出できます。郵送の場合、本人確認書類(写)添付台紙に本人確認書類の写しを添付しましょう。
※参考:本人確認に関するFAQ|国税庁
番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願い|国税庁
マイナンバーが確認できる書類
開業届の提出にあたっては、マイナンバーを確認できる書類も必要です。マイナンバーカードを作成済みなら、マイナンバーカードそのものを提示しましょう。マイナンバーカードは、本人確認書類としても使用できます。マイナンバーカードがない場合は、マイナンバーが記されている住民票などを用意する必要があります。
※参考:番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願い|国税庁
開業届と合わせて提出する書類
状況に応じて、開業届とともに提出する書類もあります。以下でくわしく解説します。
青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は、確定申告を青色申告で行うために税務署に提出する書類です。正式名称は「所得税の青色申告承認申請書」です。開業時点から青色申告での確定申告を希望するなら、開業届と同時に青色申告承認申請書を税務署に提出してください。
また、開業届を提出した後でも申請書の提出は可能です。青色申告をするには、青色申告で確定申告する年の3月15日までに提出しましょう。なお、確定申告をする年の1月16日以降に開業届を提出した場合、申請書の提出期限は開業届の提出日から2か月以内です。
青色専業者給与に関する届出書
青色専業者給与に関する届出書は、個人事業主として開業した事業を手伝う配偶者や親族などがいる場合、支払う給与を青色申告で経費として計上するために必要な書類です。
青色専業者給与に関する届出書を提出するには、青色申告承認申請書の提出が前提となります。事前に申請書を提出していない場合は、申請書と青色専業者給与に関する届出書を同時に提出しましょう。なお、新規開業における青色専業者給与に関する届出書の提出期限は、青色事業専従者の給与を経費として計上する年の3月15日です。
※参考:A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続|国税庁
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は、従業員を雇用している場合、源泉徴収税の特例の承認手続きのために必要な書類です。原則として、源泉徴収税は納付作業を毎月しなければなりません。しかし、給与を支払う従業員が10人未満なら、特例の承認により年2回の一括納付が可能になります。
※参考:A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請|国税庁
所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書
所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書は、棚卸資産の評価や減価償却資産の償却の方法を自分で決めるための書類です。新しい事業の開始に合わせて提出する必要があります。提出期限は、開業した年の確定申告期間と同様です。
※参考:A1-18 所得税の棚卸資産の評価方法の届出手続|国税庁
A1-19 所得税の減価償却資産の償却方法の届出手続|国税庁
h3:所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書
所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書は、開業に伴って事業所や店舗を構え、納税地を指定するために提出する書類です。提出期限は特にありません。ただし、申請した納税地が対象になるタイミングは、書類の提出日以降となります。
※参考:[手続名]所得税・消費税の納税地の変更に関する届出手続|国税庁
開業届の提出方法と手順
開業届の提出方法は、税務署への持参、郵送、オンラインの3つです。それぞれについて手順を解説します。
税務署へ持参する
ここでは、開業届を税務署へ持参して提出する手順について解説します。
1.開業届を用意する
開業届の書類は、税務署の窓口で受け取れます。国税庁のホームページにアクセスし、フォーマットをダウンロードして使用する方法もあります。どちらも無料で特別な手続きも必要ありません。
2.必要事項を記入する
開業届に必要事項を記入しましょう。具体的な項目は、氏名、生年月日、マイナンバー、職業、屋号、開業日などです。事前にマイナンバーが確認できる書類を用意したり、職業や屋号をあらかじめ考えておいたりすれば、スムーズに記入できます。
3.税務署に持ち込む
開業届の書類を税務署の窓口で提出します。提出時に必要な持ち物は以下のとおりです。
・開業届
・開業届の控え
・マイナンバーが確認できる書類
・本人確認書類
・印鑑
所得税の青色申告承認申請手続や青色専業者給与に関する届出書など、開業届と同時に提出したい書類があれば、そちらも準備しておきましょう。
4.受領印が押された控えを保管する
控えに受領印が押されたら、開業届の提出は完了です。受領印が押されている開業届の控えは、個人事業主としての開業を証明する書類となります。そのため、受け取った後は適切に保管しましょう。
郵送で提出する
ここでは、開業届を郵送で提出する手順について解説します。
1.必要な書類を用意する
開業届を郵送で提出する際に必要な書類は、以下のとおりです。
・開業届
・開業届の控え
・マイナンバーが確認できる書類
・本人確認書類
・返送用封筒
税務署へ持参する方法と同様、開業届と一緒に提出したい書類があれば同時に郵送できます。
2.所轄税務署へ送る
必要な書類をまとめて税務署へ送付しましょう。個人情報を含む重要な書類であるため、簡易書留のように一定の保証が付いた方法で送付すると安心です。なお、郵送で提出する方法では、受領印が押された開業届の控えは返送により受け取れます。
オンラインで提出する
ここでは、開業届をオンラインで提出する手順について解説します。
1.必要な情報を取得する
開業届をオンラインで提出する場合、国税庁が運営する電子申告・納税システムのe-Taxを用います。e-Taxを利用するには、利用者識別番号や電子証明書などを取得する方法や、マイナンバーカードを活用する方法などがあります。
※参考:e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーについて | 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
2.必要項目を入力する
e-taxでは税に関するさまざまな申請が可能であり、そのなかから個人事業の開業・廃業等届出書を選ぶ必要があります。画面に従って必要項目を入力しましょう。
※参考:e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーについて | 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
3.電子署名を付与して送信する
必要項目をすべて入力し終えたら、電子署名や電子証明書を付与して送信しましょう。e-Taxに登録した電子証明書と同一の電子証明書で、有効期限内である必要があります。
送信し終えると、e-Taxのメッセージボックスに受信通知が届きます。受信通知や送信した開業届のデータが開業届の控えとなるため、必要なときにすぐ確認できるようにしておきましょう。
※参考:e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーについて | 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
開業届を提出するメリット
開業届の提出により、事業を運営するうえで大きなメリットを得られます。ここでは、主なメリットを4つ解説します。
屋号名義の事業用口座を作れる
開業届を提出すると、屋号名義の事業用口座を作成できます。屋号名義の事業用口座は、取引先からの売上入金や仕入先への支払いのために使用可能です。事業用とプライベート用で資金を分けられて便利なうえに、取引先の経理処理においても分かりやすくなります。
確定申告で青色申告が可能
開業届の提出に伴って所得税の青色申告承認申請書を提出すれば、確定申告の青色申告が可能になります。青色申告を行うと、最大65万円の控除や、最長3年間の赤字の繰り越しが可能です。所得税を下げられ、節税になります。
小規模企業共済へ加入できる
小規模企業共済は、個人事業主の退職金になる資金を積み立てられる制度です。開業届があれば、小規模企業共済への加入手続きができ、将来の資金面の不安を和らげられます。
各種証明書として使える
開業届を提出すると、就業の事実や事業実態を示す証明書として利用できます。たとえば、賃貸借物件の契約や補助金の申請などを行う場合に活用できます。
開業届に関する注意点
開業届を提出する際は提出期限と失業給付について気をつけましょう。
開業届の提出期限は事業開始日から1か月以内
開業届は、事業を開始した日から1か月以内に提出する必要があります。期限が土日祝日であれば、その翌日まで期限の延長が可能です。未提出でも罰則はありませんが、基本的には忘れずに期限内に提出しましょう。
失業給付が受けられない可能性がある
会社員から個人事業主になると、事業を開始したタイミングによっては、失業給付を受けられない可能性があります。失業給付の受け取りの可否については、最寄りのハローワークで確認しましょう。
まとめ
開業届は、基本的に定められた期限内での提出が必要です。提出しなくても罰則の対象にはならないものの、他の内容について書類を提出する際に、開業届の提出が前提となる場合もあります。また、開業届の提出にはさまざまなメリットがあります。
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