開業届を出すデメリットとは?出す必要がない人や注意点、提出方法と手順まで解説

開業届とは、事業を開始したことを申告する書類であり、メリットもあるがデメリットもあります。提出する場合、どのように提出するのか、必ず提出しなければならないのかといった悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。

本記事では、開業を考えている人に向けて、開業届を出す方法や注意点も解説しているため、参考にしてみてください。

開業届とは

開業届の正式名称は、「個人事業の開業・廃業等届出書」であり、事業を開始したことを税務署に申告するための書類です。

開業届の提出期限

所得税法により、事業開始の事実があった日から1か月以内の提出が義務となっています。ただし、提出期限が土・日・祝日に当たる場合は、翌平日が期限となります。

開業届を提出しなかった場合の罰則

提出が遅れたり、未提出であったりした場合にも、罰則自体は設けられていません。税務署などから開業届の提出を催促されることもないため、メリット・デメリットを考慮して提出するか否かを検討できます。

開業届を出したほうが良い人と必要ない人

開業届は、必ず提出する書類ではないという特徴があります。ただし、開業届が必要ない人もいれば、提出したほうが良い人もいるため注意が必要です。

出したほうが良い人

開業届を提出したほうが良い人の条件は、次のとおりです。

・青色申告で確定申告したい

・開業届を就労証明として利用したい

・屋号付きの銀行口座を持ちたい

・創業融資や銀行からの融資を検討している

・小規模企業共済に加入したい

出す必要がない人

一方で、開業届を提出する必要がない人の条件は、次のとおりです。

・年間所得が20万円以下の人

・突発的な収入や継続性がない収入を得る場合

開業届を出すメリット

開業届は、出した方が良いケースと出さなくてよいケースがあり、提出することで得られるメリット・デメリットが関係しています。

ここでは、開業届を出すメリットについて解説します。

青色申告で確定申告ができ、特別控除が利用できる

開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を提出すれば、確定申告で青色申告の選択が可能です。青色申告を選択した場合、所得金額から最大65万円を控除できるといったメリットがあります。

さらに、青色申告を行うことで、赤字を最大3年まで繰越可能となります。

例えば、1年目と2年目それぞれで100万円ずつ赤字、3年目に200万円の黒字だった場合、1年目と2年目の赤字200万円と3年目の黒字200万円を相殺できます。相殺したことで、3年目の課税対象金額が0円となるため、節税に繋がります。

小規模企業共済への加入ができる

開業届を出すことで、小規模企業共済への加入が可能です。

加入することによって、積み立てによる退職金制度を利用できます。この制度では、廃業や退職時に積み立てた金額に応じた給付金がもらえるため、ほとんどの個人事業主が利用しています。

また、小規模企業共済の掛金は、全額所得控除が可能といったメリットもあります。

屋号の銀行口座が開設できる

屋号付きの銀行口座の開設できるようになり、事業用の口座であることを明確にすることで、顧客や取引先からの信頼度が高まります。口座を開設することで、プライベート用のお金と区別しやすいこともメリットの1つです。

さらに、開業届を出すことで法人用のクレジットカードを申請できます。確定申告後であれば個人事業主でも申請できますが、確定申告の時期を待たなければなりません。しかし、開業届を提出する場合は、その時点で申請が可能となります。

個人事業主としての就労証明となる

開業届は、事業主であることの証明となるため、就労照明として使用できます。保育園や学童の利用などで提出する就労証明にも、開業届の控えが必要になります。

また、事務所の契約、金融機関での融資の申請などにおいて、審査材料の1つとして活用することも可能です。

開業届を出すデメリット

開業届を提出することで多くのメリットを得られますが、もちろんデメリットも存在します。

ここからは、開業届を出すデメリットについて解説します。

失業給を受けられない可能性がある

開業届を提出すると、個人事業主として事業を開始するため、「再就職の意志と能力がない」とみなされます。このようなケースの場合、失業給付を受けられなくなる恐れがあるため、開業届の提出するタイミングに注意が必要です。

扶養からはずれる可能性がある

健康保険によっては「個人事業主は収入に関わらず扶養に入れない」としているところもあります。提出する前に、配偶者や家族の加入している健康保険組合の規定を確認しておくことをおすすめします。

経理業務が必要となる

青色申告特別控除の制度を利用し、最大65万円の控除を受けるためには、複式簿記での帳簿付けが必要であり、帳簿付けの手間がかかります。

帳簿付けが難しい場合、最大10万円の控除となりますが、単式簿記による白色申告を行うといった方法もあります。単式簿記であれば、1つの勘定科目の増減を記録・集計するシンプルな方法となっているため、複式簿記と比べて記帳が容易です。

開業届を出す方法と手順

ここからは、実際に開業届を提出する方法と手順について解説します。

1. 開業届の申請書を用意する

まずは、開業届の申請書を用意しましょう。

申請書は、税務署の窓口で受け取るか、国税庁のWebサイト「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続新規タブで開く」からダウンロードできます。

参考:個人事業の開業・廃業等届出書│国税庁

2. 申請書へ記入

任意の方法で申請書を入手したら、申請書の項目に沿って記入します。

届け出の区分は「開業」として記入し、所得の種類は「事業所得」が一般的です。事業の概要の項目については、具体的かつ簡潔に記入するよう心掛けましょう。

また、申請書は控えのために1部余分に記入しておくことをおすすめします。

3. 提出

すべての項目を記入したら、申請書を提出します。提出先は、納税地を所轄する税務署長です。

提出方法は、以下の3つがあります。

・税務署窓口に直接持参して提出

・税務署宛てに郵送して提出

・e-Taxを活用したインターネットでの提出

提出する際の手数料は無料となっており、郵送の場合は、返信用封筒をいれておくことで、後日控えが返送されます。

開業届の注意点

開業届を提出する際には、メリット・デメリット以外にいくつかの注意点があります。

副業で開業届を出しても控除を受けられない可能性が高い

開業届は、「事業所得」に対するものであり、副業の場合は、基本的に「雑所得」や「一時所得」として扱われます。そのため、副業で開業届を提出した場合、控除を受けられない恐れがある点に注意が必要です。

最大65万円の控除を受けるためには、一時的な事業でなく、継続的に行われている事業である必要があります。

納税地が変更する場合は届け出が必要

納税地が変わる場合には、「所得税・消費税の納税地異動に関する届出書」を提出する必要があります。

異動前の税務署が提出先となっており、提出期限は1か月以内です。

まとめ

開業届は、事業を開始することを申告する書類です。提出することが強制されていませんが、提出することで青色申告が可能、就労照明として利用できるなど、さまざまなメリットが得られます。

ただし、失業給付を受けられない、扶養から外れる恐れがあるなどのデメリットもあるため、自身の状況に合わせて提出するか否かを判断する必要があります。

不動産を個人でやっている人や独立を検討している人は、「株式会社ハウスドゥ住宅販売」が提供する資料や各種セミナーの利用がおすすめです。

新規事業の立ち上げや人材育成など、会場・録画・オンラインでセミナーを開催しています。不動産での独立など、不動産事業に関して詳しく知りたい人は、ぜひ一度利用してみてください。

資料ダウンロードはこちら