フランチャイズを個人事業主として開業するメリット・デメリットは?法人との違いも解説

フランチャイズを個人事業主として開業するメリット・デメリットは?法人との違いも解説

フランチャイズで開業するときには、個人事業主か法人かどちらかを選択することが必要です。

どちらにもメリットとデメリットが存在するのですが、この記事ではフランチャイズを個人事業主として開業することにフォーカスします。

意外と知られていない裏技を含めて、個人事業主として開業するポイントを理解しましょう。

 

個人事業主としてフランチャイズを開業するメリット

個人事業主とは、個人として事業を継続して営む人(自然人)を指し、法人との違いは少なくありません。

まずは個人事業主としてフランチャイズを開業するメリットについて、法人との違いを含めて考えてみましょう。

 

事業開始までの手続きが簡単

個人事業主でフランチャイズを開業するまでの手続きは、法人のそれと比べかなり手間と費用が抑えられることがメリットです。

個人事業主として開業する場合、事業開始から1カ月以内に納税地を所轄する税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するだけで最低限の手続きは完了します。

一方で法人では、税務署などへの届出以前に法人の設立・登記を行わなければならず、自分で手続きをする場合でも株式会社で約22万円、合同会社で約10万円の費用が必要です。

なお、税制上のメリットが大きい所得税の青色申告を行うため、「青色申告承認申請書」の提出も開業届と同時に提出することが多くなります。

 

社会保険料の負担を減らすことができる

フランチャイズで開業するとき、個人事業主であれば社会保険(厚生年金保険や健康保険、介護保険など)の負担を減らすことができます。

特に事業者の多くが加入している協会けんぽは、保険料の半分以上を事業主が負担しなければならず、個人事業主であればこの負担を避けられるのは大きなメリットです。

ただ、個人事業主であっても以下の場合は社会保険に加入しなければなりません。

  • 協会けんぽ … 常時5人以上を使用し、所定の17業種に該当する個人事業所
  • 労働保険 … 従業員を1人でも雇った個人事業所

気になるのは事業主負担の大きい協会けんぽですが、常時5人以上とは正社員もしくは、週の所定労働時間と1カ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である従業員の数のことを指します。

また「所定の17業種」というのは、サービス業の一部(クリーニング業、飲食店、ビル清掃業など)や農業、漁業などを除く業種です。

 

軌道に乗るまで余計な税負担を回避できる

フランチャイズ事業が軌道に乗るまである程度の期間が必要になりますが、個人事業主であれば税負担を減らすことができます。

個人事業主であっても法人であっても、税金が課税されるのは所得(収入から経費を控除した金額)で、課される税金は以下のとおりです。

所得税

課税対象の所得金額 税率 控除額
1,000円~1,949,000円 5% 0円
1,950,000円~3,299,000円 10% 97,500円
3,300,000円~6,949,000円 20% 427,500円
6,950,000円~8,999,000円 23% 636,000円
9,000,000円~17,999,000円 33% 1,536,000円
18,000,000円~39,999,000円 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

 

法人税

課税対象の所得金額 税率
800万円以下 15%
800万円超 23.2%

 

個人事業主であれば、利益の少ない開業当初ほど個人事業主のほうが税負担的にはメリットがあります。

また、法人の場合には赤字であっても法人住民税(都道府県民税及び市町村民税)の均等割が資本金額に応じて課税され、それがないことも個人事業主の利点です。

 

消費税の免税期間を有効活用できる

何かと話題の多い消費税ですが、課税対象となる事業者は基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超える事業者です。

つまり最初の2年(個人事業主であれば暦年、法人事業者であれば事業年度)は消費税を納める必要がありません。

ただ、特定期間の課税売上高もしくは給与などの支払額が1,000万円を超えた場合は、その課税期間から課税事業者となります。

個人事業主の場合は、前年の1月1日から6月30日までの期間が特定期間となり、事業開始の時期は重要なポイントです。

フランチャイズ事業とはいえ、法人などの消費税課税事業者が取引相手であれば、インボイス登録を求められ免税の恩恵は得られないかもしれませんが、この免税期間を有効活用すれば大きな節税効果を得られます。

フランチャイズ事業の最初の2年間を個人事業主として経営し、その後法人化すれば最大4年間は消費税を支払わないことが可能です。

 

個人事業主のフランチャイズで考えられるデメリット

個人事業主のフランチャイズオーナーに関するメリットは分かったとして、デメリットにはどのようなものが考えられるのでしょうか。

ここからは個人事業主としてフランチャイズを開業するデメリットについて、法人との違いを含めて説明します。

 

社会的信用度と資金調達

個人事業主と法人を比較した場合、主に以下の点から法人のほうが社会的信用度は高いといわれます。

  1. 法人は登記情報が多く公的機関によって存在が確認されているが、個人事業主は事業を行っていることを証明することが難しい。
  2. 個人事業主は本人が亡くなってしまうと事業継続が難しいと判断される。
  3. 個人事業主との取引を制限し法人としか取引を行わない企業がある。

これらは信用度を考える上で一つの側面に過ぎないとはいえ、取引先の立場で考えると非常に分かりやすい物差しです。

また、金融機関などからの資金調達でも法人のほうが有利なことは多く、フランチャイズを開業するにしても個人事業主より法人を設立したほうが、開業への本気度が高いと思われるのは自然なことでしょう。

 

事業承継がやや面倒な個人事業主

個人事業主と法人とでは事業承継のしやすさに大きな違いがあり、相続手続きについても特有の対応が必要になります。

法人形態で事業を行っていれば、仮に創業者が亡くなったとしても法人自体は存続し、配偶者や子あるいは第三者が代表取締役に就任することで事業は継続できます。

これが個人事業主の場合は故人の名義で廃業届を提出し、事業を相続する相続人が開業届を出すほか、相続財産についても事業用資産とそれ以外を区分することが必要です。

またフランチャイズ契約では、契約期間中における加盟者の交代や、加盟者死亡による地位の相続を認めていないことが一般的です。

個人事業主としてフランチャイズオーナーとなり、世代交代を見据えているならその可否なども確認しなければなりません。

 

赤字の繰り越し

青色申告を選択していれば、個人事業主も法人もある年(期)で発生した赤字を繰り越すことができます。

ただ、法人が赤字を10年繰り越せるのに対し、個人事業主の場合は3年しか繰り越せません。

この差はかなり大きなもので、長期的な視点で黒字化を目指す上で無視できないものです。

 

なお、繰り戻し還付を受けるためには、赤字の前年も青色申告を行っていなければなりません。

フランチャイズ開業で個人事業主と法人に課される税金

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個人事業主と法人では、課せられる税金に大きな違いがあり、どちらの経営スタイルを選ぶべきか考えるための重要なポイントです。

これはフランチャイズ事業だけに限ったことではないので、普遍的な経営知識としても知っておくべき内容となっています。

 

個人事業主と法人による税金の違い

先ほど個人事業主と法人に課税される税金について触れましたが、税率では見えてこない税金(節税)の仕組みがあります。

個人事業主の場合は収入から経費を引いた金額が「事業所得」となり、そこから社会保険などの控除を引いた課税所得に所得税が課されます。

それに対して法人の場合、収入から経費を引くところまで同じですが、それに加えてオーナーの役員報酬が経費になるので、その点も考慮すれば、法人のほうが明らかに有利になるのは事業所得が800万円を超えたあたりです。

個人事業主の場合は所得に対して直接課税される一方、法人の場合は給与として個人へ所得を移してから給与所得として課税されるイメージになります。

 

利益が大きくなるほど法人のほうが有利

個人事業主と法人を比べた場合、所得800万円が一つの分岐点になりますが、そこから利益が大きくなるほど法人のほうが圧倒的に節税効果は高くなります。

個人事業主に課税される所得税は累進課税となっていて、その最高税率は45%にもなり、加えて個人住民税が10%、個人事業税が5%(自治体により差があり)を合わせて約60%の税率です。

これは課税所得が4,000万円を超えた場合ですが、所得が上がるほど法人の税率と比べて明らかに不利になります。

これが法人の実効税率(損金算入できる税金を勘案した実態に近い税率)であれば、東京都の場合以下のような税率です。

 

令和8年3月31日以前に開始する事業年度 令和8年4月1日以後に開始する事業年度
34.59% 35.43%

 

この実効税率は、外形標準課税対象外の法人(資本金1億円以下)の数値ですが、所得が大きくなるほど個人に課される税率との差が大きくなります。

これは7段階にもなっている所得税の税率と比べ、法人税の税率が2段階にとどまっている差から生じるものです。

なお、令和8年(2026年)4月1日以降に開始する事業年度からは、「防衛特別法人税」の課税がスタートするので実効税率も上がっています。

 

利益が出始めてからでも遅くない法人化

ここまでの解説を見た方は「絶対に法人のほうが有利」だと思われるかもしれませんが、あくまでフランチャイズ事業で高い利益を出した場合の比較です。

所得が1,000万円以下であれば、個人事業主と法人との差はそれほど大きなものではありません。

また、法人であれば強制加入となる協会けんぽは、支払う給与に対して28.21%(介護保険対象者は29.8%)もの労使負担が発生します(協会けんぽ東京支部の場合)。

これらの事実を考えれば、最初から法人としてフランチャイズ事業を始めるメリットはほとんどありません。

金銭負担を考慮すれば、個人事業主としてフランチャイズ事業を始め、利益が出てから法人化を検討しても遅くはないでしょう。

 

フランチャイズを個人事業主として開業する流れと確定申告

十分に検討した上で個人事業主としてフランチャイズを開業する場合、どのような手順を踏んでいくのでしょうか。

ここからは、個人事業主がフランチャイズオーナーとして開業するまでのプロセスを確認します。

 

フランチャイズ事業の選定と事業計画

個人事業主としてフランチャイズ開業をしようと考えたら、なにより重要なのは加盟するフランチャイズ事業・本部の選定です。

フランチャイズ事業の選定では、以下のような項目を比較検討してみましょう。

  • 自身の経験や性格との親和性
  • 市場の将来性
  • FC本部の評判や実績
  • 初期費用・ロイヤリティ
  • 説明会などで提示された営業予測
  • サポート体制や契約期間

フランチャイズ事業の特徴は、経験のない分野でも本部のサポートで開業できることなので、得手不得手を考えすぎず幅広く情報収集しましょう。

また、あまり早い段階で候補を絞り過ぎると、軌道修正が利かなくなり後戻りできないリスクが大きくなってしまいます。

 

資金調達とフランチャイズ契約

フランチャイズ事業の選定とほぼ同時に、開業に必要な資金調達も進めることも必要です。

開業資金は事業の内容によって大きく変わってきますが、自己資金で賄うことが難しい場合は以下の資金調達方法を検討しましょう。

  • 日本政策金融公庫の融資
  • 民間の金融機関からの融資
  • 補助金や助成金の活用

これらの方法以外にクラウドファンディングの利用事例もありますが、独自性という面がないフランチャイズ事業では難易度が高い方法です。

外部からの資金調達は時間を要することが多いので、開業までのスケジュールも十分考慮しなければなりません。

加盟するフランチャイズを決め資金調達に目途が立ったら、いよいよフランチャイズ契約になります。

もちろん加盟審査に通る必要がありますが、事業内容によっては物件の賃貸契約なども必要です。

 

開業届と確定申告

個人事業主としてフランチャイズ事業を開始したら、メリットでも説明したとおり、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」と「青色申告承認申請書」を提出します。

ここまでの手続きは非常に簡単で、後は暦年ごとに所得税の確定申告をするだけなのですが、問題は消費税にあります。

本来は開業年と2年目については消費税が課税されません(一部例があり)が、事業の種類によってはそうならないケースも考えられます。

2023年10月1日から導入されたインボイス制度は、事業者は適格請求書(インボイス)に記載された消費税でないと「仕入税額控除」が受けられなくなるというものです。

始めるフランチャイズの業種によっては、課税事業者相手の商売になることもあり、その場合は取引先からインボイスの発行を求められるでしょう。

取引先の重要性によっては消費税の課税事業者になることを選択し、2年間の非課税期間を諦めることも必要です。

インボイスの登録をすると、登録日から2年が経過する日の属する課税期間までは、免税事業者に戻れないなど注意点も多いので、専門家に相談することも検討しましょう。

 

個人事業主ならではの注意点

フランチャイズ事業を個人事業主として開業するなら、個人事業主ならではの注意点を把握しておくことが必要です。

個人事業主のメリットでもある社会保険などへの加入義務がないということは、オーナーへの社会保障が薄くなってしまうことでもあります。

具体的には以下のことが考えられるので、そのリスクについては注意が必要です。

  • 業務中の負傷でも労災給付を受けられない
  • 傷病手当・出産手当などの社会保険給付が受けられない
  • 障害厚生年金・遺族厚生年金が受けられない
  • 将来の年金受給額が減少する

これらのリスクは、開業後に長く個人事業主を続けるほど顕著になってきます。

また、個人事業主として開業した当初は社会的な信用を得られにくく、クレジットカードやローンの審査、賃貸物件の入居審査で苦労するかもしれません。

これらの手続きなどを独立・開業前に済ませておくことも有効な対策となります。

 

個人事業主としてフランチャイズ開業するときのポイント

個人事業主 フランチャイズ 開業 ポイント

個人事業主が独立するためにはフランチャイズ以外の選択肢もありますが、ここからは個人事業主とフランチャイズの相性について考えてみましょう。

また、先ほども触れた「法人成り」も視野に入れたフランチャイズ開業のポイントも説明します。

 

フランチャイズのメリット

フランチャイズで開業する最大のメリットは、未経験の業種であってもFC本部のノウハウを利用しビジネスを構築できる点です。

フランチャイズ事業は、すでに確立した販売方法、集客・広告宣伝のノウハウ、経験・知識がすべてパッケージになっています。

また、業界未経験であっても開業前にFC本部の研修を受けられるので、不安を感じることはほとんどありません。

多くのフランチャイズチェーンは、すでにブランドを確立しているので集客などで苦労することも少ないでしょう。

そのようなバックボーンのない開業では、認知度を上げながら集客することが最大のハードルなので、開業時から一定の売上を見込めることは大きな魅力です。

 

フランチャイズのデメリット

フランチャイズ事業にはデメリットも存在しているので、将来的な事業展開なども考慮することが重要です。

フランチャイズの魅力は、すでに本部の確立してあるブランド力を利用することですが、それは裏を返せば独自色を出しにくいということです。

FC本部の求める加盟店像は、フランチャイズ事業の忠実な再現です。

もし自身のアイディアを試したいという意思が強いのであれば、フランチャイズはデメリットになるでしょう。

また、フランチャイズに加盟している間はロイヤリティの支払いが永遠と続くので、経営が軌道に乗るほど不満を覚えるかもしれません。

なにかと制約が多いことがフランチャイズの特徴でもあるので、契約終了後のことも含めて、フランチャイズ契約の中身はしっかり確認しておきましょう。

 

個人事業主としてフランチャイズを始めるときのポイント

フランチャイズを始めるとき、加盟審査や資金調達の問題さえクリアできれば個人事業主のほうが費用や経営的なリスクを抑えられます。

ただ、将来的な展望を考えれば事業が軌道に乗ったタイミングで法人設立(法人成り)を検討すべきです。

フランチャイズ事業で利益が大きくなるほど、個人事業主と比べ法人のほうがメリットは多く、また社会保障面でも有利になります。

つまり、個人事業主としてフランチャイズ事業を始めるときは、事業計画作成時に法人化も視野に入れておくとよいでしょう。

また、フランチャイズ契約も個人事業主と法人とでは名義が変わってしまうので、法人化した場合の手続きについて加盟時に確認しておくべきです。

 

まとめ

事業モデルが確立しているフランチャイズ事業でも、必ず成功するという保証はありません。

そのようなリスクを考えた場合、費用面でも手続き面でも負担の少ない個人事業主としての開業は悪い選択肢ではないでしょう。

実際に、個人事業主としてフランチャイズ事業を始めて、2店舗目3店舗目と拡大していく中で法人化している事業者も多く見かけます。

特に重要な点は、加盟を考えているフランチャイズが経営形態の変更に柔軟に対応してくれるかです。

開業へ第一歩を踏み出すときのフランチャイズ事業選定では、この点も考慮しながら考えましょう。