不動産売買契約や賃貸契約での重要事項説明、いわゆる重説は本来対面で行う必要がありましたが、オンライン通話での実施が可能になりました。感染症の流行も重なり、不動産業界ではますますIT重説への移行が求められています。この記事では、IT重説のメリット・デメリットはもちろん、説明する流れについてもくわしく解説します。
この記事の目次
不動産におけるIT重説とは?
IT重説とは、パソコンやスマートフォン、タブレットなどのIT機器を利用して重要事項説明を行うことです。宅地建物取引業法では、土地や建物などの不動産売買や賃貸物件を借りる際の契約時に、買主や借主に対して物件に関する説明が義務づけられています。
説明が必要な理由は、専門知識が不足していることで買主や借主が不利な契約を結ばないためです。従来は契約時の重説は対面でなければなりませんでしたが、IT機器を利用する方法でも重説が認められるようになりました。
IT重説が可能な条件
IT重説を活用するためには、以下の4つの要件を満たしている必要があります。
・双方向でやり取りできるIT環境が整っていること
・重要事項説明書などを事前に送付していること
・開始前に相手方の重要事項説明書などとIT環境の準備が整っているかどうか確認できること
・宅地建物取引士証を相手方が視認できたことを画面上で確認できること
IT重説の現在までの経緯
IT重説は、2013年の閣議決定「世界最先端IT国家創造宣言」を受け、2015年から賃貸取引および売買取引の社会実験が開始されました。実際に賃貸取引では1,000件以上、売買取引では2,000件以上のIT重説が行われています。
両者とも目立ったトラブルがなかったため、賃貸取引では2017年10月1日から、売買取引は2021年4月から本格的にIT重説が導入されるようになりました。
IT重説では電子交付も可能
デジタル化が進むなか、2021年5月12日にはデジタル改革関連法が成立しました。加えて宅地建物取引業法の改正が2022年5月13日に施行されたことで、重説にかかる書類も郵送の必要がなくなり、電子交付や電子契約が可能になっています。印刷や押印が不要な電子交付では書類の交付がスムーズになるほか、買主や借主にとっても手間が軽減されます。
IT重説で期待できるメリット
IT重説を利用することによって、さまざまなメリットがあります。以下で期待できる4つのメリットを解説していきます。
モバイル端末で利用可能
IT重説は、通信環境さえ整っていれば利用できるのがメリットの1つです。パソコンだけに限らず、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末でも利用できます。IT化が進んでいる現代では、すでにモバイル端末を所有している人は多いでしょう。特に利用する端末を提供する必要もなく、しかも時間を選ばずに重説を行えます。
日程が合わせやすい
対面で実施してきた従来の重説は、契約する買主や借主と仲介業務を行う宅建士が、日程を合わせなければなりませんでした。両者の都合によっては日程調整が難しかったり、遠方でなかなか出向くのが難しかったりすることもあります。IT重説はいつでも実施が可能なため、1時間程度余裕をもって重説にかかる時間を空けてもらえばいいだけです。
移動する必要がない
IT重説はいつでも行えるのはもちろん、場所も選びません。従来の重説ではどこかに集まって説明する必要がありました。IT重説では宅建士は事務所で、買主や借主は自宅でなど、直接顔を合わせなくても実施が可能であるため、宅建士も買主や借主も移動の手間がなくなるメリットがあります。特に遠方の場合、移動がなくなるだけでも時間とコストの負担が減るでしょう。
記録がとりやすい
不動産の取引において、重説は契約に関わる重要事項として欠かせません。IT重説は端末を通して実施されるため録音や録画が取りやすく、確実に説明したという記録を残せるのもIT重説のメリットです。録音や録画には相手方の同意が必要ですが、記録を残しておくことで、退去時に説明した、説明しなかったなどのトラブルになるリスクも減らすことにつながります。
IT重説で知っておきたいデメリット
IT重説にはメリットだけではなくデメリットも存在します。滞りなく実施するために、デメリットも把握しておきましょう。
Web会議ツールの導入に手間がかかる
オンライン通話に必要なWeb会議ツールの導入に、それなりの手間がかかるのはデメリットになります。相手方がツールを導入していない場合は、インストールしてもらう必要があるからです。
ただ、顧客のなかには慣れ親しんでいるシステム以外は使いづらいと感じたり、そもそも普段使わないツールや、アプリの導入に対して抵抗感があったりすることも珍しくありません。
通信環境のリスクがある
時と場所を選ばずオンライン通話ができるのはメリットですが、通信環境が悪化すると説明が途中で切断されてしまう可能性があります。インターネットに接続ができない、通信が不安定で聞き取りにくいなどのトラブルが発生すれば、重説の役割を果たせません。通信環境が回復せず翌日に持ち越しとなると、顧客にも迷惑がかかるリスクがあります。
細かな資料が共有しにくい
IT重説では、Web会議の画面と音声を通して重要事項説明を行っていきますが、文章はともかく、図面などの細かな資料は共有しにくいのもデメリットの1つです。滞りなく説明を行うためには、重要事項説明書とともに、関連資料を事前に送信または送付しておく必要があります。
重説を軽視される可能性がある
不動産取引の契約では、重説は必ず実施すべき重要な説明です。本来は対面で確認していくべき内容ですが、オンラインで手軽にできるゆえに軽視されることも考えられます。例えば、自宅でオンライン通話できる環境があれば、ゲームをしながら、本を読みながら、テレビを見ながらでもできてしまうため、顧客が真剣に聞いてくれない可能性があります。
IT重説に必要な準備
IT重説を取り入れるためには、事前準備が必要です。具体的には、Web会議ツールの導入やオンライン通話ができる端末の有無の確認はもちろん、安定した通信環境の確保などがあります。重要事項説明書などの必要書類は紙媒体で事前に送付するか、電子書面で送信しておきます。加えて、当日は宅地建物取引士証の提示が必要になるため、必ず準備しておいてください。
IT重説を実施する流れ
ここからは実際にIT重説を実施する流れについて、5段階のステップに分けて解説します。
ステップ1.通信環境およびツールの準備
まずは映像や音声が確認できる通信環境を整える準備が必須です。途切れることがないか事前に接続チェックを行い、お互いに問題なく通話できることを確認しておくとよいでしょう。通信に適切なツールが双方でそろっていないようならば、あらためてインストールしてもらう必要があります。
ステップ2.重要事項説明書などの事前送付
IT重説時に必要な重要事項説明書は、あらかじめ書類を郵送しておくか、電子交付しておきましょう。当日になって届いていないということがないよう、相手方が確実に受け取ったかどうか確認も取っておいてください。事前に目を通しておいてもらうとより安心です。
ステップ3.本人確認と宅地建物取引士証の提示
IT重説の当日になったら、ツールを利用して相手方と接続します。契約する買主または借主が、当事者本人であることを確認するところからスタートです。同時にIT重説を行う宅建士側は宅地建物取引士証を提示し、相手に確認してもらいます。
ステップ4.録画開始・IT重説を実施
次に録音や録画をする旨を伝えたうえで、IT重説の開始です。対面の場合と同じように、重要事項説明書に記載されている要件を漏れのないように説明してください。通信環境が悪く、説明がうまく進まないようなら、接続し直すか、後日あらためてやり直す必要があります。
ステップ5.書類の返送または返信
IT重説に必要な書類を郵送している場合は、IT重説が終了したら、重要事項説明書に記名・押印をして1部を返送してもらいます。電子書面を交付している場合は、記名・押印の代わりに電子署名が認められるようになりました。IT重説の終了後は、電子署名を活用して返信してもらいます。
IT重説で気を付けたい注意点
スムーズにIT重説を実施するためには、いくつかポイントがあります。最後に気をつけておきたい注意点を解説します。
相手に同意を得ておく
個人情報保護も鑑み、IT重説の実施には相手方の同意を得ておく必要があります。同意を得ずにIT重説を行った場合、トラブルに発展する可能性も捨てきれません。重説では売主や買主、貸主や借主の個人情報に触れる場面もあります。トラブルを回避するためにも、関係者すべての同意を得ておくべきです。加えてIT重説の同意を得たことを記録しておくようにしましょう。
カメラはオフにできない
IT重説でも、従来の対面で行ってきた重説と同様の条件で実施できる環境が必須です。宅建士側と契約者の双方向で、音声や映像のやり取りができることが求められているため、IT重説が実施されている間はどちらもカメラをオフにできません。IT重説を選択する場合は、カメラをオフにできない旨を事前に知らせておいてください。
内覧しないとリスクが残る
IT重説や書面の電子化が可能になったことで、契約までの手続きがすべてオンライン上で済ませられるようになりました。しかし、利便性が向上する一方で、内覧をせずに契約を結んでしまうケースが増える懸念があります。物件を確認しないことで、契約後にイメージとは違うというトラブルが発生する可能性があるため、できるだけ内覧は勧めるようにしましょう。
まとめ
オンライン化の推進や感染症の流行を経て、従来は対面で行われてきた重説がITを活用して実施できるようになりました。ただ、実際にIT重説を利用するためには、いくつかのポイントを押さえておくことが求められます。
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